三菱自動車は2026年8月20日、アウトランダーPHEVのナビゲーションシステムに不具合があるとして、国土交通省へリコールを届け出ました。
対象となるのは、2024年10月14日から2026年2月16日までに製作された、型式「5LA-GN0W」のアウトランダーPHEVです。

通常、ナビの不具合なら改善対策かサービスキャンペーンではないんですか?

区分は不具合の部品だけで決まるわけではない。
今回はナビ画面が安全確認用カメラの表示装置を兼ねていて、映像が出ないと保安基準に適合しなくなるおそれがある。
だからリコールなんだ。

同じナビの故障でも、保安基準への影響によって扱いが変わるんですね!

そういうことだ。
今回のリコールで一番注目すべき点だな。
今回の不具合は、ナビが一時的に使えなくなるだけではありません。
ナビゲーション画面には、車両の直前や左側、後方を確認するためのカメラ映像も表示されます。
そのため、画面が黒くなったりフリーズしたりすると、
- 直前・左側の安全確認
- 後退時の車両直後の確認
という、保安基準に関係する機能まで使えなくなるおそれがあります。
今回は、リコールの内容とともに、なぜナビゲーションシステムの不具合が「後写鏡等」や「後退時車両直後確認装置」の基準に影響するのかを解説します。
アウトランダーPHEVのリコール概要
今回公表された内容は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| リコール届出番号 | 5865 |
| 届出日 | 2026年8月20日 |
| リコール開始日 | 2026年8月21日 |
| 車名 | 三菱 |
| 通称名 | アウトランダーPHEV |
| 型式 | 5LA-GN0W |
| 車台番号の範囲 | GN0W-0500101~GN0W-0603102 |
| 製作期間 | 2024年10月14日~2026年2月16日 |
| 対象台数 | 13,226台 |
| 不具合件数 | 52件 |
| 事故 | なし |
ただし、公表されている車台番号の範囲には、実際には対象とならない車両が含まれている場合があります。
自分の車が対象かどうかは、車台番号だけで判断せず、三菱自動車のリコール検索や販売店で確認してください。
どのような不具合が起こるのか
原因は、ナビゲーションシステムの制御プログラムが適切でなかったことです。
この不具合によって、次のような症状が発生することがあります。
- ナビゲーションシステムが起動しない
- 使用中に再起動する
- 液晶画面が黒くなる
- 画面がフリーズする
- 意図しない画面スクロールが発生する
問題となるのは、この画面がナビやオーディオだけに使われているわけではないことです。
アウトランダーPHEVでは、直前・左側を確認するときや後退するときのカメラ映像も、ナビゲーションの液晶画面に表示されます。
ナビ画面に不具合が起こると、カメラ自体が正常であっても、運転者が必要な映像を確認できなくなる可能性があります。
このため、国土交通省への届出では、不具合の部位が次のように記載されています。
後退時車両直後確認装置、後写鏡等(ナビゲーションシステム)
つまり、原因はナビゲーションシステムにありますが、影響を受ける保安基準上の装置は一つではありません。
直前及び側方の視界とは?
運転席から車両のすぐ前や左側が直接確認できない車では、ミラーやカメラなどによって必要な範囲を確認できるようにする必要があります。
SUVやミニバンなどでは、車体の形状や運転席の高さなどによって、ボンネット付近や左前方に死角が生じやすくなります。
従来は、車両の左前方に補助ミラーを取り付ける方式が多く使われていました。いわゆる「直前直左鏡」や「補助確認鏡」と呼ばれるものです。
近年では、車両前方や側方にカメラを取り付け、その映像を車内のモニターに表示する方式も増えています。
どちらの方式であっても、重要なのは「必要な範囲を運転者が確認できること」です。
カメラが取り付けられていても、映像が表示されなければ、確認装置として機能しているとはいえません。
「直前直左」と「直前及び側方の視界」の関係
今回のリコール資料では、「直前直左確認時のカメラ映像」と記載されています。
一方、保安基準の解説や検査実務では、「直前及び側方の視界」という表現が使われることがあります。
簡単に整理すると、
- 直前:車両のすぐ前方
- 側方:主に助手席側となる車両左側
- 直前直左確認装置:その死角を確認するためのミラーやカメラ
という関係になります。
今回のアウトランダーPHEVでは、ナビゲーション画面に表示されるカメラ映像が、この直前・左側の確認を担っています。
そのため、画面が黒くなったりフリーズしたりすると、道路運送車両の保安基準第44条に規定される「後写鏡等」の基準に適合しなくなるおそれがあります。
後退時車両直後確認装置とは?
後退時車両直後確認装置は、車両を後退させるときに、運転者が車両直後の状況を確認できるようにする装置です。
代表的なものがバックカメラです。
ただし、保安基準上は、単に後ろにカメラが付いていればよいわけではありません。
カメラ映像を利用する方式では、後退時に必要な範囲の映像が運転者に適切に表示される必要があります。
今回の不具合では、ナビゲーション画面が正常に作動しないことで、シフトをリバースに入れても後方映像が表示されない可能性があります。
そのため、道路運送車両の保安基準第44条の2に規定される「後退時車両直後確認装置」にも影響します。
筆者コメント
今回のリコール対象車は、製作期間が「2024(令和6)年10月14日~2026(令和8)年2月16日」とされています。
一方、後退時車両直後確認装置の基準は、次の自動車から適用されています。
① 2022(令和4)年5月1日以降に製作された新型車
② 2024(令和6)年11月1日以降に製作された継続生産車
5LA-GN0W型アウトランダーPHEVは2021(令和3)年に登場した型式であるため、今回の適用関係では新型車ではなく、継続生産車として扱われます。
したがって、2024(令和6)年10月14日から10月31日までに製作された対象車は、後退時車両直後確認装置の基準が適用される前の車両となります。
ただし、これらの車両も直前直左カメラの映像が表示されないことで、保安基準第44条「後写鏡等」に適合しなくなるおそれがあるため、今回のリコール対象に含まれています。
つまり、今回の対象車すべてに第44条の2が関係するわけではなく、製作時期によって影響する保安基準が異なると考えられます。
一つの画面が複数の保安基準に関係している
今回のリコールで注目したいのは、一つのナビゲーション画面が複数の安全装置の表示部として使われている点です。

ナビ画面は、従来のような案内やオーディオ操作だけの装置ではありません。
現在の車では、次のような機能が一つの画面に集約されています。
- ナビゲーション
- オーディオ
- 車両設定
- アラウンドビューモニター
- 直前直左確認カメラ
- バックカメラ
そのため、画面や制御プログラムに不具合が起こると、複数の安全機能が同時に使えなくなる可能性があります。
ナビが映らないだけでも車検に影響する?
ナビゲーション機能そのものが使えないだけで、直ちに車検の基準に抵触するわけではありません。
しかし、その画面が保安基準上必要なカメラ映像の表示にも使用されている場合は別です。
車両がミラーなどではなく、カメラ映像によって直前・側方の視界や後方確認の基準を満たしている場合、検査時に映像が表示されなければ、基準への適合性に影響する可能性があります。
今回のアウトランダーPHEVについては、メーカー自身が「保安基準に適合しなくなるおそれがある」としてリコールを届け出ています。
ただし、リコール作業が未実施であることだけを理由に、すべての車両が一律に車検不合格になるという意味ではありません。
実際の検査では、適用される基準や装置の作動状態などを確認して判断することになります。
改善措置はプログラムの書き替え
今回の改善措置では、対象となるすべての車両について、ナビゲーションシステムの制御プログラムを対策仕様へ書き替えます。
部品交換ではなく、プログラムの更新によって対応するリコールです。
対象となる可能性がある場合は、三菱自動車のリコール検索で確認するか、最寄りの販売店へ相談してください。
また、すでに次のような症状が出ている場合は、リコール案内を待たずに相談した方がよいでしょう。
- ナビ画面が突然消える
- ナビが勝手に再起動する
- バックカメラが表示されない
- 直前・左側のカメラ映像が表示されない
- 画面がフリーズして操作できない
修理が終わるまでに症状が発生した場合は、カメラ映像だけを頼りにせず、目視やミラーによる周囲確認を徹底する必要があります。
検査員目線で伝えたいこと
今回のリコールは、「ナビの調子が悪い」という話だけではありません。
現在の自動車では、ナビゲーション画面が保安基準上必要な確認装置の一部になっている場合があります。
カメラ本体が正常でも、その映像を表示する画面や制御システムに不具合があれば、装置全体として必要な機能を果たせません。
特に、直前直左確認装置や後退時車両直後確認装置は、運転席から直接見えにくい場所にいる歩行者などを確認するための重要な装置です。
「走行には問題ない」「ナビを使わないから大丈夫」と考えず、対象車は早めに改善措置を受けることをおすすめします。

ナビの不具合でも、使われている機能によってはリコールになるんですね!

そうだ。
不具合が起きた部品だけを見るのではなく、その先で何の機能が失われるのかまで考える必要がある。

なるほど。今回は安全確認に必要なカメラ映像まで見られなくなるから、単なるナビの不具合では済まないんですね

そのとおりだ。
対象車の所有者は軽く考えず、早めに確認して改善措置を受けてほしい。
まとめ
今回のリコールのポイントは次のとおりです。
- 対象は5LA-GN0W型アウトランダーPHEVの一部
- 対象台数は13,226台
- ナビゲーションシステムの制御プログラムに不具合がある
- 画面の黒表示、フリーズ、再起動などが発生する可能性がある
- 直前直左確認用のカメラ映像が表示されないおそれがある
- 後退時のバックカメラ映像も表示されないおそれがある
- 保安基準第44条と第44条の2に影響する可能性がある
- 改善措置はナビゲーションシステムのプログラム書き替え
ナビゲーションシステムは、もはや道案内をするだけの装置ではありません。
複数の安全確認機能を一つの画面へ集約する車が増えたことで、ソフトウェアの不具合が保安基準への適合性にまで影響する時代になっています。
対象となる可能性があるアウトランダーPHEVの所有者は、車台番号を確認し、早めに販売店へ相談しましょう。



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