【2026年8月】車検のロービーム検査はなぜ完全移行する?現場を知る社長が本当の理由を解説

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2026年8月1日から、対象車の車検では、ヘッドライトテスタを使用した前照灯検査が全国でロービーム計測へ完全移行します。

この変更について、SNSなどでは、

「急に車検が厳しくなるのでは?」

「古い車は車検に通らなくなる?」

「ヘッドライト交換で車検代が高くなるのでは?」

といった不安の声も見られます。

しかし、今回の変更は、2026年になって突然決まったものではありません。

ロービームを基準とする制度は約30年前から準備されており、2015年からは原則としてロービームでの検査が実施されてきました。

2026年8月1日に変わるのは、ロービームでの計測が難しい一部の車について、一定の条件を満たせばハイビームで計測していた「過渡期の取扱い」が終了することです。

私は自動車の検査現場に携わり、多くのヘッドライトを見てきました。

今回は、一般的なニュースだけでは分かりにくい制度の歴史や、現場で起きていたこと、車検前に注意したい車について解説します。

2026年8月1日から始まるロービーム以降に関する内容は次の記事でも解説しています。

結論:ロービーム検査は突然始まる制度ではない

結論からいうと、今回の完全移行は「急に車検を厳しくするための変更」ではありません。

ポイントは次の3つです。

  • ロービームを検査する考え方は1995年の保安基準改正から始まっている
  • 2015年からロービーム計測が原則となっている
  • 2026年8月1日に、ハイビームで判定する過渡期の取扱いが終了する

つまり、約30年かけて検査機器や整備体制を整え、ロービームそのものを検査する本来の運用へ完全に移行するということです。

2026年8月1日から何が変わる?

対象となるのは、原則として1998年(平成10年)9月1日以降に製作された自動車です。

二輪自動車、側車付二輪自動車、一定の大型特殊自動車、最高速度20km/h未満の自動車、被牽引自動車などは対象から除かれます。

これまでも対象車は、最初にロービームで光度や照射方向を計測していました。

ただし、ロービームのカットオフラインが確認しにくいなど、ロービーム計測による判定が難しい車については、ロービームの照射状態を確認したうえで、ハイビームの光度と向きを計測する過渡期の取扱いがありました。

2026年8月1日以降は、この取扱いが終了します。

対象車はロービームで基準に適合しなければ、ハイビームへ切り替えて合否を判定することができなくなります。

なお、1998年8月31日以前に製作された車まで、すべてロービーム検査へ変わるわけではありません。

国土交通省などの案内でも、対象は原則として1998年9月1日以降に製作された車とされています。

国土交通省・自動車技術総合機構・軽自動車検査協会のお知らせ

実は約30年前から決まっていた制度

ロービーム検査の完全移行までには、長い準備期間がありました。

年月主な動き
1995年12月前照灯に関する保安基準を改正。ハイビームとロービームの要件を分けて規定
1998年9月(平成10年)新しい基準が適用される車の製作が始まる
2015年9月1998年9月1日以降の製作車について、原則ロービーム計測へ移行
2018年6月ロービーム計測が難しい一部の車に、ハイビームで判定する過渡期の取扱いを開始
2024年8月全国一斉の完全移行を予定していたが、期限を2026年8月へ延期
2024~2026年地域の状況に応じて、完全移行に向けた準備や取組を実施
2026年8月過渡期の取扱いを終了し、全国でロービーム計測へ完全移行

1995年に保安基準が改正された

1995年12月、前照灯に関する道路運送車両の保安基準が改正されました。

この改正により、走行用前照灯であるハイビームと、すれ違い用前照灯であるロービームの要件が分けて規定されました。

1998年9月1日以降に製作された新基準車については、原則としてロービームを検査する考え方が採用されています。

ただし、当時は対象となる車がまだ少なく、ロービームを測定できるヘッドライトテスタも十分に普及していませんでした。

そのため、実際の検査では、ハイビームが基準に適合していればロービームも適合するものとして扱う暫定的な運用が続きました。

2015年から原則ロービーム計測が始まった

新基準車が広く普及し、検査場や指定整備工場でもロービームを測定できる体制が整ってきたことから、2015年9月1日以降は原則としてロービームで検査する運用へ移行しました。

軽自動車検査協会も、2015年当時から1998年9月1日以降に製作された軽自動車について、原則ロービームで検査すると案内しています。

軽自動車検査協会「すれ違い用前照灯検査への移行について」

2018年にハイビームでの過渡期取扱いが始まった

ロービーム計測を原則としても、すべての車を問題なく測定できたわけではありません。

カットオフラインを確認しにくい車や、ヘッドライトテスタによるロービーム計測が難しい車も存在しました。

そこで2018年6月1日から、ロービームの照射光線が他の交通を妨げないことを確認したうえで、ハイビームの光度と向きを計測する過渡期の取扱いが始まりました。

これが、一般に「ロービームで不合格でもハイビームで合格する場合がある」といわれてきた運用です。

ただし、単純にロービームが不合格なら、無条件でハイビームへ切り替えていたわけではありません。

2024年の完全移行は延期された

当初は2024年8月1日から、全国一斉に過渡期の取扱いを終了する予定でした。

しかし、周知期間中に寄せられたさまざまな意見を踏まえ、完全移行の期限は2026年8月1日まで延期されました。

その間、地域ごとに完全移行へ向けた取組や準備が進められ、2026年8月から全国で統一した運用へ移れる状況になったという流れです。

そのため、今回の変更は「急に始まる新制度」というより、長期間続いていた過渡期がようやく終了すると考えた方が実態に近いでしょう。

なぜハイビームではなくロービームを検査するのか

ハイビームは、法令上「走行用前照灯」と呼ばれ、前方を遠くまで照らすためのライトです。

一方のロービームは「すれ違い用前照灯」と呼ばれ、対向車や前を走る車をまぶしくさせないよう、照射範囲を抑えながら前方を照らします。

対向車がいる道路、前走車がいる場面、市街地などでは、ロービームを使用する機会が多くなります。

そこで、

「実際に使用頻度の高いロービームが、必要な場所を正しく照らしているか」

「対向車や前走車をまぶしくさせる向きになっていないか」

を車検で確認する必要があります。

ヘッドライトの光軸は、走行時の振動や部品の劣化、事故修理、バルブ交換などによって少しずつズレることがあります。

上向きにズレれば、対向車や前走車をまぶしくさせるおそれがあります。反対に下向きすぎれば、運転者が遠くを確認しにくくなります。

国土交通省なども、国際的にロービームを計測している状況を踏まえ、日本でもロービーム計測を導入していると説明しています。

つまり、ロービーム検査の目的は、単に明るさを測ることではありません。

必要な明るさと正しい照射方向、適切な配光が確保されているかを確認することにあります。

制度はシンプルでも、現場はそう簡単ではなかった

制度だけを見ると、「普段よく使うロービームを測ればよい」というシンプルな話に見えます。

しかし、実際の検査現場では、そう簡単に割り切れない問題がありました。

カットオフラインが確認しにくい

ロービームには、明るい部分と暗い部分を分ける「カットオフライン」があります。

ヘッドライトテスタは、このカットオフラインなどを読み取り、光の向きを判定します。

ところが、レンズの劣化や内部のくもり、配光の乱れなどがあると、カットオフラインが不鮮明になります。

人の目では明るく見えていても、検査機器が判定に必要な配光を正確に読み取れないことがあります。

ヘッドライトテスタとの相性がある

検査基準そのものは共通ですが、車のヘッドライト構造や光源、測定環境によって、カットオフラインの検出しやすさが変わることがあります。

特に社外LEDバルブへ交換した車では、ヘッドライトユニットとの組み合わせによって配光が乱れる場合があります。

正面から見ると明るくても、路面を照らす光が必要な場所へ届いているとは限りません。

レンズや内部部品が劣化している

樹脂製ヘッドライトは、紫外線や熱、使用期間の経過によって黄ばみやくもりが発生します。

さらに、外側のレンズがきれいに見えても、内部のリフレクターが劣化していることがあります。

このような車では、バルブを新品に交換しても十分な光度や適切な配光が得られない場合があります。

こうした問題が積み重なり、ロービームだけで一律に判定することが難しかったため、長期間にわたって過渡期の取扱いが続けられてきました。

それでも全国で完全移行できるようになった理由

近年は、ロービーム計測で合格する車の割合が大きく向上しています。

自動車技術総合機構が2026年7月に公表した資料によると、2026年1月から6月までの全国平均合格割合は次のとおりです。

集計月ロービーム計測での合格割合過渡期取扱いによる計測割合
2026年1月97%3%
2026年2月99%1%
2026年3月99%1%
2026年4月98%2%
2026年5月98%2%
2026年6月98%2%

各月とも、対象車の97~99%がロービーム計測で合格しています。

自動車技術総合機構「前照灯検査(ロービーム計測)の合格割合」

ここで注意したいのは、この数字が「車検を受けたすべての車の一発合格率」を意味するものではないことです。

公表されているのは、ロービーム計測対象車における「ロービーム計測」と「過渡期取扱いによる計測」の割合です。

それでも、過渡期の取扱いが必要な車は各月1~3%まで減っています。

整備工場における事前点検や光軸調整、検査機器への対応、ユーザーへの周知などが進み、全国で完全移行できる状況が整ったと考えられます。

ロービーム完全移行で特に注意したい車

完全移行後、すべての古い車が車検に通らなくなるわけではありません。

年式だけを理由に不合格になることもありません。

ただし、次のような車は車検前にヘッドライトの状態を確認しておくことをおすすめします。

ヘッドライトレンズが黄ばんでいる車

レンズの黄ばみや白いくもりは、ヘッドライトの光を遮ったり、光を拡散させたりする原因になります。

表面の清掃や研磨で改善する場合もありますが、劣化が深い場合はレンズやヘッドライトユニットの交換が必要になることもあります。

HIDを長期間使用している車

HIDは点灯していても、使用期間の経過によって徐々に光量が低下することがあります。

左右で色や明るさが大きく異なる場合や、点灯直後から暗く感じる場合は、バーナーやバラストなどの点検が必要です。

社外LEDバルブへ交換している車

社外LEDバルブへの交換自体が、直ちに車検不合格になるわけではありません。

ただし、もともとハロゲンバルブ用として設計されたヘッドライトへLEDバルブを取り付けると、発光位置の違いによって配光が乱れる場合があります。

「純正バルブより白くて明るく見える」ことと、「検査基準に適合する」ことは別の問題です。

内部リフレクターが劣化している車

ヘッドライト内部の反射板であるリフレクターが焼けたり、曇ったりしていると、光を前方へ正しく反射できません。

レンズを磨き、バルブを交換しても光度が出ない場合は、内部の劣化が原因となっている可能性があります。

製作から長期間が経過した車

製作から20年前後経過している車では、レンズ、配線、コネクター、バルブ、リフレクターなどが複合的に劣化している場合があります。

ただし、古いこと自体が不合格理由になるわけではありません。

適切に整備され、ロービームの光度、照射方向、配光が基準に適合していれば車検に合格できます。

「明るく見える」だけでは車検に通るとは限らない

ヘッドライト検査では、単純な明るさだけを確認しているわけではありません。

主に確認されるのは、

  • 必要な光度があるか
  • 照射方向が適切か
  • カットオフラインなどの配光が適切か
  • 対向車など、ほかの交通を妨げる光になっていないか

という点です。

そのため、壁に照らしたときに明るく見えても、光軸が上向きすぎたり、光が広い範囲へ散っていたりすれば基準に適合しない可能性があります。

反対に、運転席から少し暗く感じても、必要な測定位置で光度が確保され、照射方向が基準内であれば適合する場合があります。

見た目だけで判断せず、ヘッドライトテスタで測定することが重要です。

ロービーム完全移行で車検代は高くなる?

検査方法がロービームへ完全移行するだけで、すべての車の車検料金が一律に上がるわけではありません。

ただし、ロービームが基準に適合しない場合は、次のような整備費用が発生する可能性があります。

  • レンズの清掃や研磨
  • 光軸調整
  • バルブの交換
  • ヘッドライトユニットの交換
  • 配線や点灯装置の修理
  • 社外LEDから適合するバルブへの交換

特にヘッドライトユニットを新品へ交換する場合は、車種によって高額になることがあります。

一方で、早めに点検しておけば、光軸調整やバルブ交換など比較的軽い整備で改善できる可能性もあります。

車検当日に初めて不適合が判明し、部品の手配や再検査が必要になる方が、結果として時間も費用もかかりやすくなります。

車検前に確認しておきたいポイント

車検が近い場合は、少なくとも次の項目を確認しておきましょう。

  • 左右のロービームが点灯しているか
  • レンズに強い黄ばみや白いくもりがないか
  • ライト内部に水滴や結露がないか
  • 左右で明るさや灯光色が大きく異なっていないか
  • 社外LEDや社外HIDへ交換していないか
  • ヘッドライトの高さ調整ダイヤルが標準位置になっているか
  • 事故修理や足回り変更後に光軸調整を行っているか

ただし、光度や光軸、配光は目視だけでは正確に判断できません。

不安がある場合は、車検直前ではなく、早めに整備工場などでヘッドライトテスタによる測定を受けるのが確実です。

社長として伝えたいこと

私は自動車の検査現場で、多くのヘッドライトを見てきました。

ヘッドライトは点灯していればよいと思われがちですが、実際には光の向きや配光によって、安全性が大きく変わります。

必要な場所を十分に照らせなければ、歩行者や障害物の発見が遅れる可能性があります。

反対に、光が上を向きすぎていれば、対向車や前走車の運転者をまぶしくさせ、危険を生むことがあります。

だからこそ、今回の完全移行は「古い車を車検で落とすため」でも「車検を厳しくして整備費用を増やすため」でもありません。

夜間に本来見えるべきものを確実に照らし、ほかの道路利用者をまぶしくさせない状態を確認するための検査です。

一方で、旧車を大切に乗り続けているユーザーにとって、負担が増える可能性があることも事実です。

レンズを磨くだけでは改善せず、ヘッドライトユニットの交換や修理が必要になる車もあるでしょう。

だからこそ、車検当日に慌てるのではなく、少し早めにヘッドライトの状態を確認しておくことが大切です。

早めの点検は、車検へ通すためだけではありません。

夜間に安心して運転するためであり、結果として時間と費用を抑える近道にもなります。

まとめ

2026年8月1日から、1998年9月1日以降に製作された対象車の前照灯検査は、全国でロービーム計測へ完全移行します。

今回のポイントは次のとおりです。

  • ロービーム検査は2026年に突然始まる制度ではない
  • 制度の原点は1995年の保安基準改正にある
  • 2015年から原則ロービーム計測が実施されている
  • 2026年8月に終了するのはハイビームで判定する過渡期の取扱い
  • 2026年1~6月のロービーム計測割合は各月97~99%まで向上している
  • レンズの黄ばみ、古いHID、社外LED、内部リフレクターの劣化には注意が必要
  • 年式が古いだけで不合格になるわけではない
  • 車検直前ではなく、早めにヘッドライトテスタで測定することが重要

ロービーム検査は、車を不合格にするための制度ではありません。

自分自身が夜道を安全に走り、対向車や前走車にも危険を与えないための検査です。

2026年8月以降に車検を受ける予定がある方は、車検日を迎える前に、ロービームの状態を一度確認しておきましょう。

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