
検子先輩、僕も将来検子先輩みたいな検査員になりたいです。
保安基準を勉強しているのですが、まずは簡単そうな「灯火器」から勉強していきたいと思います。

勉強しようとするのは、いいことだね!
でも、どうして灯火器の基準が簡単そうだと思ったの?

灯火器って、きちんと点灯するかどうかと、光の色を覚えればいいんですよね?

新治くん、その考えはちょっと甘いかも。
灯火器とひとまとめにしているけれど、実際には装置ごとに細かく基準が定められているから、そんなに単純な話ではないのよ。
灯光の色はもちろん、個数や取付位置、高さ、視認できる範囲など、確認しなければならない項目がたくさんあるわ。
さらに、車の製作年月日によって適用される基準が異なることもあるのよ。

そ、そうなんですか……。
灯火器の基準なら、簡単に覚えられると思っていました。

灯火器は身近な装置だから簡単そうに見えるけれど、現役の検査員でも判断に迷うことがある基準の一つなの。
でも、新治くんがせっかくやる気を出してくれたことだし、まずは基本から一緒に勉強していこうか。

はい!よろしくお願いします!
灯火器は、実際の車検において不合格になりやすい項目の一つです。
球切れのほか、灯光の色や明るさ、個数、取付位置などを指摘されるケースが多くあります。
さらに、自動車の製作年月日によって適用される基準が異なる場合もあり、現役の検査員でも判断に迷うことがあります。
この記事では、灯火器の保安基準を初めて勉強する新治と一緒に、主な灯火器の種類と基本的な基準について分かりやすく解説します。
灯火器全般で確認されるポイント
灯火器の基準は装置ごとに異なりますが、検査時には主に次の項目が確認されます。
- 正常に点灯または点滅するか
- レンズ面の損傷などにより、機能が損なわれていないか
- 必要な明るさが確保されているか
- 灯光の色が適切か
- 必要な個数が備えられているか
- 取付位置や高さが適切か
- 必要な範囲から視認できるか
- 灯火器が確実に取り付けられているか
- 点灯・点滅の方法が適切か
一つずつ解説していきます。
正常に点灯または点滅するか
灯火器の基本となるのが、正常に点灯または点滅するかどうかです。
車幅灯、尾灯、制動灯、番号灯などが正常に点灯するか、方向指示器が一定の周期で点滅するかを確認します。
車両に備えることが義務付けられている灯火器が点灯しない場合は、車検に合格しません。
また、方向指示器は点滅すればよいわけではなく、原則として毎分60回以上120回以下の一定の周期で点滅する必要があります。
レンズ面の損傷などにより、機能が損なわれていないか
灯器が損傷していたり、レンズ面が著しく汚れていたりすると、本来の性能を発揮できないことがあります。
例えば、レンズの欠損によって本来とは異なる色の光が漏れている場合や、汚れによって必要な明るさが確保できない場合は、車検に通らない可能性があります。
ただし、レンズ面に小さなひびがあるだけで、直ちに不適合になるとは限りません。
損傷や汚れによって、灯光の色、明るさ、視認性などの機能が損なわれていないかが判断のポイントです。
必要な明るさが確保されているか
灯火器には、装置ごとに必要な明るさや、点灯を確認できなければならない距離が定められています。
例えば、車幅灯と尾灯は夜間に300m、方向指示器は原則として昼間に100m離れた位置から点灯を確認できる必要があります。
一部の規定では、光源のワット数と照明部の面積が一定の条件を満たし、機能が正常な灯火器を基準に適合するものとして扱います。
ただし、すべての灯火器や車両について、ワット数と面積だけで判断するわけではありません。灯火器の種類や適用される規定に応じた確認が必要です。
灯光の色が適切か
灯火器には、それぞれ灯光の色が定められています。
例えば、制動灯と尾灯は赤色、方向指示器は橙色、後退灯と番号灯は白色です。
レンズの劣化や退色、不適切なバルブへの交換などによって、本来の色から外れてしまうことがあります。
商品に「車検対応」と表示されていても、実際に取り付けた状態で規定の色に見えるとは限らないため注意が必要です。
必要な個数が備えられているか
灯火器には、必要な個数や同時に点灯できる個数が定められています。
例えば、前部霧灯は任意で取り付けられる灯火器ですが、同時に3個以上点灯しないように取り付ける必要があります。
灯火器を増設するときは、取付位置や灯光の色だけでなく、個数の基準にも注意が必要です。
取付位置や高さが適切か
灯火器には、地上からの高さや車体の最外側からの距離など、装置ごとに取付位置が定められています。
オーバーフェンダーを取り付けると、灯火器自体を移動していなくても、車体の最外側から灯火器までの距離が変わります。
また、ローダウンすると、灯火器の地上高も低くなります。
特に、尾灯や制動灯がリアバンパー付近の低い位置に備えられている車は、車高を数cm下げただけでも下縁の高さが基準を下回る可能性があります。
必要な範囲から視認できるか
一部の灯火器には、上下や左右の定められた範囲から照明部を見通せることが求められています。
例えば、一般的な四輪自動車の前面または後面に備える方向指示器には、適用される規定によって、上方・下方15°、内側45°、外側80°の範囲から照明部を見通せることが求められます。
ただし、灯火器の取付高さや自動車の種類、製作年月日によって適用される範囲や例外が異なります。
バンパー、スペアタイヤ、後付け部品などによって、必要な方向から灯火器が見えなくなっていないか注意が必要です。
灯火器が確実に取り付けられているか
灯火器の取付部やレンズ取付部に、緩みやがたがないことも確認されます。
特にヘッドライトの取付部に緩みや破損があると、走行中の振動によって照射方向が変化したり、光軸を正しく調整できなくなったりすることがあります。
灯火器が点灯していても、取付状態によって本来の性能を維持できない場合は不適合となる可能性があります。
点灯・点滅の方法が適切か
灯火器には、ほかの灯火器との連動や、点灯・点滅の方法についても基準があります。
例えば、原則として前照灯、前部霧灯または車幅灯のいずれかが点灯しているときは、尾灯や番号灯を任意に消灯できない構造である必要があります。
また、方向指示器には点滅回数が定められている一方、尾灯や番号灯は原則として点滅するものであってはなりません。
灯火器は、それぞれが単独で基準に適合するだけでなく、ほかの灯火器と正しく連動して作動することも重要です。

灯火器は、保安基準の中でも覚えやすい項目だと思っていました。
でも、装置ごとに基準が異なるから、思っていたより覚えることが多いんですね。

私も新人の頃は、灯火器の基準が一番覚えやすそうだと思っていたわ。
でも実際には、装置ごとに色や個数、取付位置、作動方法などが細かく定められているの。
一度に全部覚えようとせず、まずはそれぞれの灯火器の役割と基本的な基準から、しっかり確認していくことが大切よ。
車検時に不適合になりやすい事例
球切れ・配線不良・ヒューズ切れなどによる不点灯

灯火器でもっとも多い不適合になりやすい項目です。
事前に確認していたとしても、「検査時に電球が切れた」という事例は多いです。
最近ではLED光源を用いたランプユニットが増え、高寿命であるため切れることは少なくってきましたが、基盤の不具合により不点灯になるケースがあります。また、複数のLEDが用いられている場合がほとんどですが、LEDが一つでも切れている場合、見た目に問題なくても不適合になる場合があります。
DIYを行った場合、配線を断線させた、知らぬ間にショートさせヒューズが切れてしまいそのまま気づかず、車検時に初めて気が付いたというケースもあります。
社外テールレンズへの変更

社外テールレンズに交換したからといって、直ちに不適合になるとは限りません。
社外テールレンズでは、灯光の色や明るさだけでなく、照明部の面積や光源のワット数、灯器に表示された認証表示なども確認されます。
特に後退灯では、適合を示す認証表示などが確認できず、照明部の面積が不足していることで不適合となる場合があります。
最近では流れる方向指示器(シーケンシャルウインカー)が流行っています。流れる方向指示器が不適合というわけではなく、流れ方や形状により厳しく確認される場合があります。
また、純正テールレンズには後部反射器(リフレクター)が備えられていたが、社外テールレンズに変更したことにより後部反射器が喪失して不適合になります。
車高ダウンによる取付位置(高さ)の変更

車高を下げたときに注意するのは、最低地上高だけではありません。
車高の変化に伴い、灯火器の地上高も低くなるため、灯火器ごとの取付位置にも注意が必要です。
例えば、制動灯の下縁高さは地上から35cm以上必要と定められていますが、車高を下げることにより制動灯の取付高さが変わり、この基準に適合しなくなるおそれがあります。
特にリアバンパーに灯火器が備えられているものは要注意です。
車幅変更に伴う取付位置(最外側)の変更

意外と見落としがちなのが、最外側ルール。
一般的な四輪自動車では、すれ違い用前照灯、前部霧灯、前後の方向指示器、制動灯などについて、照明部の最外縁を車体の最外側から400mm以内に取り付ける基準があります。
ただし、自動車の種類や製作年月日、灯火器の種類によって例外や従前規定があるため、すべての車両に同じ条件が適用されるとは限りません。
特にラングラーは構造的にすれ違い用前照灯が車両中心内側によりがちです。オーバーフェンダー取付けにより全幅が変更された場合、40cmを超えてしまうおそれがあります。
平成18年以降に製作された車両は基準が厳しくなった!?
平成18年以降は灯火器の基準が厳しくなっています。
特に、取付位置、視認角度が厳しくなりました。
前後の方向指示器を例に挙げると、
| 方向指示器(前・後) | 平成17年以前 | 平成18年以降 |
| 取付高さ | 指示部の中心の高さが2,300mm以下であること | 照明部の上縁高さが地上2、100mm以下、下縁高さが350mm以上 |
| 視認角度 | 厳格な規定なし | 上方15°、下方15°、外側80°、内側45°の範囲から見渡せること |

その他、走行用前照灯(ハイビーム)の作動確認用インジケーター、前部霧灯の作動状況が一目でわかる表示、HIDのすれ違い用前照灯は走行用前照灯が点灯している場合消灯しない構造であることが定められています。
まとめ

一度に全部覚えようとするのではなく、灯火器ごとに確認することが大切なんですね。

そのとおりよ。
身近で見慣れている装置だからこそ、見落としている基準があるかもしれないわ。
新治くんにとってはまさに「灯台下暗し」ね。

灯火器だけに、灯台ですか?

……ところで、灯台の灯光の色は保安基準で何色だったかしら?

灯台は自動車じゃないので、保安基準の対象外ですよ!

そ、そうだったわね。
危うく次の記事で解説するところだったわ。
灯火器は、正常に点灯または点滅すれば、それだけで基準に適合するわけではありません。
灯光の色や明るさ、個数、取付位置、視認できる範囲、取付状態、ほかの灯火器との連動など、さまざまな項目を総合的に確認する必要があります。
また、オーバーフェンダーの装着やローダウンなどによって、灯火器自体を交換していなくても、車体最外側からの距離や地上高、視認できる範囲が変化することがあります。
社外灯器への交換や車体のカスタムを行う場合は、商品に「車検対応」と表示されているかだけで判断せず、実際に車両へ取り付けた状態で基準に適合しているかを確認することが大切です。
車検を受ける前には、すべての灯火器を実際に作動させ、球切れや色の変化、レンズの損傷、取付部の緩みなどがないか確認しておきましょう。



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