
社長、少し聞いてもいいですか?
社長は、昔から車が好きだったんですか?

いや。高校生になるまで、車にはほとんど興味がなかったよ。

意外です。子どもの頃から詳しかったのかと思いました。

整備士を目指したきっかけも、自分で見つけたものではなかったんだ。
自動車整備士や自動車検査員として働いてきた人間なら、子どもの頃から車が好きだったと思われるかもしれません。
しかし、私は最初から車が好きだったわけでも、自動車関係の仕事を目指していたわけでもありません。
今回は、車にまったく興味がなかった私が自動車整備士を目指し、二級自動車整備士の資格を取得して、現場に立つまでの経緯を振り返ります。
かつての私は車にまったく興味のない学生でした
私はもともと、車にまったく興味のない学生でした。
幼い頃から車が好きだったわけでも、将来は自動車関係の仕事に就きたいと考えていたわけでもありません。
ステップワゴン?
ワゴンR?
車名を聞いても、何が違うのかさえ分からない。それくらい、当時の私にとって車は縁のない存在でした。
そんな私が車に興味を持ち始めたのは、高校生の頃です。
当時のクラスには、車やバイクが好きな友人が多くいました。休み時間になると、車種やカスタムの話で盛り上がっています。
最初は話を聞いているだけでしたが、友人たちと過ごすうちに、少しずつ影響を受けるようになりました。
やがて、私も原付バイクに乗り始めます。
アルバイトでお金を貯め、欲しかった部品を購入し、自分のバイクを少しずつカスタムしていく。手を加えるたびに見た目や乗り味が変わっていくことが、当時の私にはとても新鮮でした。
自分で働いて稼いだお金で部品を買い、自分の理想に近づけていく。
私は、そこに大きな喜びを感じるようになりました。
今振り返ると、当時の私は車やバイクの性能そのものよりも、自分の手で部品を選び、少しずつ形を変えていくことに魅力を感じていたのだと思います。
部品を購入するためには、アルバイトをしてお金を貯めなければなりません。欲しいものをすぐに買えるわけではなく、何を優先するかを考える必要もありました。
時間をかけて手に入れた部品を取り付け、思い描いていた形に近づいたときの達成感が、車や整備に興味を持つ最初の入口になりました。
両親の一言が整備士を目指すきっかけになった
そんな私の姿を見ていた両親から、ある日こう言われました。
「あなた、車の整備士が向いているんじゃない?」
当時の私には、将来について明確な目標がありませんでした。
何になりたいのか。どのような仕事をしたいのか。真剣に考えたこともありませんでした。
しかし、両親から「整備士」という仕事を勧められたことで、初めて自分の将来と車の仕事が結びつきました。
最初から強い志があったわけではありません。
親から勧められたことが、私が自動車整備士を目指すきっかけでした。
それからは、車に詳しい友人たちに話を聞きながら、少しずつ車の知識を覚えていきました。
それまで興味のなかった車が、次第に自分の将来へとつながっていったのです。
しかし、車に興味を持つことと、整備を仕事として学ぶことはまったく別でした。
専門学校で感じた知識の差
高校卒業後、私は自動車整備士を養成する専門学校へ入学しました。
しかし、入学してすぐに、自分と周囲との知識の差を思い知らされます。
専門学校には、子どもの頃から車が好きで、車種やエンジン、部品の名前まで詳しく知っている生徒が大勢いました。
一方、私が持っていたのは、高校時代に友人から教えてもらった程度の知識です。
周囲の生徒たちが当たり前のように車の話をしていても、内容が分からず、会話についていけないことがありました。
同じ整備士を目指して入学したはずなのに、自分だけが遅れたところからスタートしている。
周囲と同じ場所にいるはずなのに、自分だけが違う場所にいるような孤独を感じることもありました。
遊ぶ時間にも参考書を開いた
専門学校へ通いながら、私はアルバイトも続けていました。
当時乗っていたバイクのカスタムを楽しむためです。
授業が終わるとアルバイトへ向かい、夜の11時まで働く。学校とアルバイトを繰り返す毎日でした。
決して余裕のある生活ではありませんでしたが、それでも車の知識が乏しいままでいることが嫌でした。
周囲に追いつくため、空いている時間があれば勉強しました。
友人とカラオケへ行ったときでさえ、自分が歌う番以外は参考書を開いていました。
今振り返れば、少し極端だったかもしれません。
それでも、最初から車に詳しかった人たちに追いつくためには、人よりも勉強するしかないと思っていました。
もちろん、勉強したからといって、すぐに周囲との差がなくなったわけではありません。
一度読んだだけでは理解できない内容もあり、同じ箇所を繰り返し確認することもありました。それでも、分からないままにせず、一つずつ覚えていくことを続けました。
最初から車に詳しかった生徒には、これまで積み重ねてきた知識があります。自分が短期間で追いつくためには、授業を受けるだけでは足りないと感じていました。
この頃に身についた「分からないことは自分で調べる」という習慣は、その後、整備士や自動車検査員として働くうえでも大きな支えになりました。
二級自動車整備士の資格を取得するまで
当時の私には、「これだけは人に負けない」といえる得意分野がありませんでした。
だからこそ、勉強だけは一生懸命取り組もうと考えていました。
定期的に行われる学科試験や実技試験で、毎回満点を取っていたわけではありません。それでも、一度も追試を受けることなく、授業についていくことができました。
その努力が実り、入学当初は周囲の話についていけなかった私も、やがて成績上位に入るまでになりました。
就職先が決まりインターンシップへ
勉強と並行して、就職活動も進めました。
就職活動の末、国産車ディーラーへの就職が決まり、実際の店舗でインターンシップを経験することになりました。
しかし、当時の私は車の知識だけでなく、社会人としての言葉遣いや振る舞いも十分に理解していませんでした。
インターンシップでは、自分の言葉遣いや態度について厳しく注意を受けることもありました。
そこで初めて、整備の知識や技術だけでは仕事はできず、社会人として相手に接する姿勢も身につけなければならないと痛感しました。
この経験は、後に自分が新人や後輩を指導する立場になったとき、技術だけでなく、伝え方にも注意を向ける原点の一つになりました。
半年間続いた模擬試験
二級自動車整備士の試験が近づくと、学校では模擬試験を繰り返す期間に入りました。
成績上位者は午前中で終わりましたが、合格ラインに届いていない生徒は夕方まで模擬試験を続けます。
当時、私は二級ガソリン自動車整備士と二級ジーゼル自動車整備士の取得を目指していました。
就職予定のディーラーでは当時ジーゼル車を扱っていなかったため、正直なところ、ジーゼルエンジンにはあまり興味を持てませんでした。
それでも、資格を取得するためには避けて通れない分野です。そう自分に言い聞かせながら、模擬試験を繰り返しました。
そして、無事に試験へ合格しました。
試験後の自己採点では、記憶している限り満点だったと思います。
車にほとんど興味がなく、周囲との知識の差に悩んでいた私が、二級自動車整備士として働くための資格を取得できたのです。
資格取得はゴールではなくスタートだった
目標のなかった高校生が、整備士として働くスタートラインに立ちました。
当時の私は、ここまで来れば何とかなると思っていました。
しかし、専門学校で学ぶことと、実際の現場で働くことはまったく違います。
資格を取得したことと、現場で車を整備できることも同じではありません。
整備士資格の取得は、ゴールではありませんでした。
むしろ、整備士としての本当の勉強は、現場に出てから始まったのです。
私の経験からいえば、最初から車に詳しくなければ整備士になれない、ということはありません。
私は車種の違いも分からない状態から整備士を目指し、専門学校では周囲との知識の差に悩みました。それでも、分からないことを調べ、勉強を続けることで、二級自動車整備士の資格を取得できました。
ただし、車に詳しくないままでよいという意味ではありません。
整備士は資格を取得した後も、新しい車両や技術について学び続ける仕事です。最初に持っている知識の量よりも、分からないことを放置せず、学び続けられるかどうかの方が重要だと私は考えています。
車に興味がなかった私が整備士になれたのも、最初から才能があったからではありません。周囲との差を認め、その差を埋めるために勉強を続けたからです。

社長も、最初から車に詳しかったわけではないんですね

分からないことばかりだったよ。でも、分からないから調べた。それを繰り返してきただけなんだ。

資格を取れば、整備士として仕事ができると思っていました。

私もそう思っていた。でも、資格を取ってからが本当のスタートだったんだ。
次回は、二級自動車整備士としてディーラーへ入社した私が、資格と現場経験の大きな違いを思い知らされた新人時代を振り返ります。
洗車と車内清掃から始まり、約36万円をかけた工具の購入、作業の失敗、売り上げへのプレッシャー。そして私は、入社からわずか4か月で退職願を提出しました。



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