

この車、今度車検なんやけど、問題なく通るやろ?
取り付けた部品はほとんど指定部品やし、寸法の変化も一定範囲内や。

結論から言います。
この車が車検に合格するかどうかは、外観を見ただけでは判断できません。

分からんって、どういうことや!?
検査員やろ!指定部品の取扱いを理解しとるんか?

もちろん理解しています。
ただし、指定部品だからといって、何個でも、何kgでも自由に取り付けられるわけではありません。
指定部品を取り付ける場合でも、取り付けた状態の自動車が保安基準に適合していることが大前提です。

ライトの見え方も問題ないし、危険な突起物もないやろ?
タイヤも車体からはみ出してへん。ほかに何があかんねん?

外観上の基準だけを見れば、そう考えるのも無理はありません。
しかし、この車には外から見ただけでは判断できない問題が残っています。
それでは、この状態でどの基準に抵触する可能性があるのか、一緒に確認してみましょう。
見た目では分からない「重量」の問題
この車で外観から判断できない問題が、車両の重量です。
ルーフラック、ルーフボックス、グリルガード、ウインチ、ランニングボード、ラダーなど、多くの部品が取り付けられています。
これらが指定部品に該当していても、取り付けた部品の重量は車両重量に加算されます。
| 指定部品 | およその重量 |
|---|---|
| グリルガード | 約15~25kg |
| ウインチ | 約25~40kg |
| エアスポイラー | 約2~5kg |
| アンテナ | 約0.5~1.5kg |
| ルーフボックス | 約15~25kg |
| ドアバイザー | 約1~2kg |
| フェンダーカバー(4輪分) | 約3~6kg |
| ランニングボード(左右) | 約15~25kg |
| ルーフラック | 約25~40kg |
| ラダー | 約5~8kg |
| トレーラーヒッチ | 約15~25kg |
| 合計 | 約120~200kg |
※実際の重量は、製品の材質、構造、サイズ、取付金具などによって異なります。
指定部品の取扱いによっては、寸法や重量が変化しても、車検証の記載変更や構造等変更検査が不要となる場合があります。
しかし、これは取り付け後の重量について、保安基準への適合まで一律に認めるものではありません。
つまり、
「変更手続きが不要=重量を無制限に増やしてよい」ではありません。
指定部品を複数取り付ける場合は、各部品の重量を合計し、取り付け後の車両重量・車両総重量・各軸重がどの程度になるのかを確認する必要があります。
車両総重量・軸重には限度がある
保安基準上、セミトレーラ以外で最遠軸距が5.5m未満の自動車は、車両総重量が20t、軸重が10t、輪荷重が5tを超えてはならないとされています。
ただし、審査事務規程7-4、8-4 車両総重量 と7-5、8-5 軸重等 では、
7-4、8-4 車両総重量
「自動車製作者が定めた車両総重量の許容限度が明確な自動車の車両総重量にあっては、これを超えてはならない。」
7-5、8-5 軸重等
自動車製作者が定めた軸重の許容限度が明確な自動車の軸重にあっては、これを超えてはならない。
と規定されています。
ハイエースは、型式や類別区分番号によって、車両重量、軸重およびメーカーが定める許容限度が異なります。
以下は、重量増加の考え方を説明するための仮定の数値です。実際の許容限度は、型式や類別区分番号によって異なります。
| 項目 | メーカーの許容限度 |
|---|---|
| 前軸重 | 1,650kg |
| 後軸重 | 1,900kg |
| 車両総重量 | 3,200kg |
前軸重と後軸重の許容限度は、それぞれの軸が個別に負担できる上限です。両方の軸に同時に許容限度まで荷重をかけられるという意味ではありません。
したがって、前軸重と後軸重がそれぞれの許容限度以下であっても、車両総重量は3,200kgを超えることができません。
今回使用する車両の数値
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 空車時前軸重 | 1,230kg |
| 空車時後軸重 | 780kg |
| 車両重量 | 2,010kg |
| 乗車定員 | 2人 |
| 最大積載量 | 1,000kg |
| 車両総重量 | 3,120kg |

今回の条件で乗員と最大積載量を加算すると、積車状態の前軸重は1,530kg、後軸重は1,590kgとなります。
計算方法は以下のとおり
【前軸にかかる荷重】
〈乗車定員分〉
乗車定員(2人)×55kg × 乗員オフセット ÷ ホイールベース
110 × 237 ÷ 257 = 101kg
計算では二捨三入・七捨八入が適用されるため、100kg
〈積載量分〉
まずは荷台オフセットの計算
リアオーバーハング ー リアゲート外側と荷室内側の間
107 ー 9 = 98cm
荷室長さ ÷ 2 ー 98 = 荷台オフセット
300 ÷ 2 ー 98 = 52cm
最大積載量 × 荷台オフセット ÷ ホイールベース
1,000 × 52 ÷ 257 = 202kg
計算では二捨三入・七捨八入が適用されるため、200kg
合計、300kgが前軸重に加算される。【後軸にかかる荷重】
110 ー 100 = 10kg
1,000 ー 200 = 800kg
よって、後軸には810kgが加算される。
| 項目 | 空車時 | 乗員・積載による加算 | 積車状態 | 許容限度 | 余裕 |
|---|---|---|---|---|---|
| 前軸重 | 1,230kg | 300kg | 1,530kg | 1,650kg | 120kg |
| 後軸重 | 780kg | 810kg | 1,590kg | 1,900kg | 310kg |
| 車両総重量 | 2,010kg | 1,110kg | 3,120kg | 3,200kg | 80kg |
指定部品の重量を加算すると
ここまでの計算では、指定部品を取り付ける前の車両重量を使用しています。
この車の車両総重量は3,120kgですが、メーカーの許容限度である3,200kgまでの余裕は80kgしかありません。
ここに、先ほど例示した指定部品約120~200kgを加算すると、次のようになります。
| 項目 | 120kg取り付けた場合 | 200kg取り付けた場合 |
|---|---|---|
| 部品取付前の車両総重量 | 3,120kg | 3,120kg |
| 指定部品の重量 | 120kg | 200kg |
| 部品取付後の車両総重量 | 3,240kg | 3,320kg |
| メーカーの許容限度 | 3,200kg | 3,200kg |
| 超過量 | 40kg | 120kg |
したがって、今回の計算例では、部品重量を最小の120kgと見積もった場合でも、車両総重量の許容限度を40kg超えることになります。
なお、この計算は、指定部品の重量が元の車両重量2,010kgに含まれておらず、乗車定員と最大積載量にも変更がないことを前提としています。
また、各部品を取り付ける位置によって前後軸への荷重配分が変わるため、前軸重と後軸重については別途確認が必要です。

車両総重量で見ると、部品を一番軽く見積もっても40kgオーバーするんか!

はい。
今回のように、もともとの車両総重量がメーカーの許容限度に近い車両では、指定部品を複数取り付けることで、許容限度を超える可能性があります。
指定部品であっても、取り付け後の車両総重量がメーカーの許容限度を超えることはできません。
乗用車には許容限度は設定されていない?

ちょお待て!
確かさっき「メーカーが許容限度を定めている貨物車では」って言うたよな?
ほんなら乗用車はどうなんや。
車両総重量や軸重の許容限度は決まってないんか?

乗用車の場合、「自動車型式認証実施要領」上、貨物車のように諸元表へ車両総重量や軸重の許容限度を記載することは、通常求められていません。
自動車型式認証実施要領について(抜粋)
許容限度は、貨物を運送する自動車、乗車定員11人以上の乗合自動車及び大型特殊自動車につ
いて、当該自動車又は車台に許容できるそれぞれの軸重及び車両総重量の限度を次の各号に留意して記載する。ただし、大型特殊自動車にあっては、記載を省略して差し支えない。

ってことは、乗用車やったら、車両総重量20t以下、軸重10t以下、輪荷重5t以下に収まっとったら、どれだけ重くしてもええっちゅうことか?

いいえ。そういう意味ではありません。
車両総重量20t、軸重10t、輪荷重5tという数値は、保安基準上の一般的な上限です。その重量まで自由に増加させてよいことを認めるものではありません。
車両が重くなれば、制動装置、タイヤの負荷能力、安定性などにも影響します。取り付け後の状態で、それぞれの保安基準に適合していなければなりません。

特に、架装などによって乗用車の車両重量が増加した場合は、制動装置の性能について確認が必要になります。
それでは、いわゆる「車両総重量1.1倍以下の取扱い」について詳しく確認してみましょう。
乗用車の「車両総重量1.1倍以下」とは?

貨物車などと異なり、一般的な乗用車は、諸元表に車両総重量や軸重の許容限度が通常記載されていません。
しかし、許容限度の記載がないからといって、指定部品を取り付けて無制限に重量を増やせるわけではありません。
車両が重くなれば、その分だけ制動装置にかかる負担も大きくなります。そのため、架装などによって乗用車の車両重量が増加した場合は、増加後の重量でも制動装置の性能に問題がないかを確認する必要があります。
この確認方法について定めているのが、審査事務規程4-20「架装等により車両重量が増加した乗用自動車等の審査」です。
この規定では、一定の条件を満たす乗用車について、次の関係が成り立つ場合、制動装置の技術基準に関する書面等による審査を省略できるとされています。
類別区分番号に対応する元の車両総重量 × 1.1
≧ 架装後の車両総重量
ただし、1.1倍は、乗用車の重量増加を無条件に認める上限ではありません。
架装後の車両総重量が1.1倍以下であれば、制動装置に関する書面審査を省略できるという取扱いです。1.1倍を超えた場合は、直ちに保安基準不適合となるわけではありませんが、増加後の車両総重量でも制動装置の技術基準に適合することを、試験成績書などの書面によって確認する必要があります。
また、この取扱いは、すべての乗用車に一律に適用されるものではありません。対象となるのは、次の条件を満たす自動車です。
- 箱型、幌型またはステーションワゴンとして認証された乗用車
- 四輪以上の指定自動車等
- 諸元表において許容限度が不明なもの
- 架装などによって車両重量が増加したもの
- 部品の改造、取付けまたは取外しなどによる制動装置の変更がないもの
つまり、一般に「車両総重量1.1倍以下ルール」と呼ばれているものは、重量増加そのものを認めるための規定ではなく、重量が増加した乗用車の制動性能について、書面審査を省略できる範囲を定めた取扱いです。
ジムニーシエラで計算すると
今回の計算例では、ジムニーシエラの車両重量を1,080kg、類別区分番号に対応する車両総重量を1,300kgとします。
1.1倍の範囲を確認するときは、車両重量1,080kgではなく、諸元表に記載された車両総重量1,300kgに1.1を乗じます。
1,300kg × 1.1 = 1,430kg
乗車定員などに変更がなければ、元の車両総重量との差である130kgが、制動装置に関する書面審査を省略できる重量増加の目安となります。
1,430kg − 1,300kg = 130kg
指定部品を合計120kgまたは200kg取り付けた場合は、次のようになります。
| 取り付けた部品の合計重量 | 架装後の車両総重量 | 1,430kgとの比較 |
|---|---|---|
| 120kg | 1,420kg | 10kg以内 |
| 200kg | 1,500kg | 70kg超過 |
合計120kgの場合は1.1倍の範囲内ですが、合計200kgの場合は1.1倍の範囲を超えるため、制動装置の技術基準に関する書面等による審査を省略できません。
このように、取り付ける部品の種類だけでなく、複数の部品を合計したときに何kg増加するのかを確認することが重要です。

車両総重量とか軸重の基準だけやなくて、ブレーキの基準も見なあかん場合もあるっちゅうことか。

そのとおりです。
ただし、これはあくまでも一例です。保安基準全体で見ていくともっと確認しなければいけない場合があります。
その他注意すべき保安基準の項目
タイヤの負荷能力

車両総重量や軸重が基準内であっても、タイヤの負荷能力が不足する場合があります。
審査事務規程7-11、8-11「走行装置」では、タイヤに加わる荷重が、ロードインデックスなどから算定したタイヤの負荷能力以下であることが求められています。
積車状態におけるタイヤ1本当たりの荷重は、基本的に次のように確認します。
積車状態の軸重 ÷ その軸に取り付けられているタイヤの本数
例えば、積車状態の後軸重が1,600kgで、後輪が左右1本ずつの場合は、タイヤ1本当たり800kgの荷重がかかるものとして確認します。
1,600kg ÷ 2本 = 800kg
この場合、装着しているタイヤには、1本当たり800kg以上の負荷能力が必要です。
したがって、軸重の許容限度を超えていなくても、タイヤのロードインデックスが不足していれば保安基準に適合しません。
かじ取車輪にかかる荷重
審査事務規程7-6、8-6「安定性」では、空車状態と積車状態のいずれについても、かじ取車輪の接地部にかかる荷重の合計が、それぞれ車両重量または車両総重量の20%以上であることが求められています。
空車状態のかじ取車輪荷重 ≧ 車両重量の20%
積車状態のかじ取車輪荷重 ≧ 車両総重量の20%
一般的な前輪操舵車では、前軸重がこの確認対象になります。
ラダー、スペアタイヤ、トレーラーヒッチなど、重い部品を後軸より後方に集中して取り付けると、てこの作用によって後軸重が増加し、反対に前軸重が減少することがあります。

前輪に十分な荷重がかかっていない状態では、加速時の荷重移動によって前輪荷重がさらに減少します。極端な場合には、急発進時に前輪が浮き上がり、ハンドルを操作しても車両の進行方向を十分に変えられなくなるおそれがあります。
そのため、車両総重量と各軸重がそれぞれの上限以下であっても、空車状態と積車状態の両方で、かじ取車輪に必要な荷重が確保されているかを確認する必要があります。
車両の安定性

重心が高くなる部品にも注意が必要です。
ルーフラックやルーフボックスなどを車両の高い位置に取り付けたり、コイルスプリングでリフトアップしたりすると、車両の重心が高くなり、安定性に影響することがあります。
安定性の基準では、一般的な自動車は空車状態で左右それぞれ35度まで傾けても転覆しないことが求められています。
そのため、次のような部品を組み合わせる場合は、指定部品であっても注意が必要です。
- リフトアップ用コイルスプリング
- ルーフラック
- ルーフボックス
- サイドオーニング
最低地上高や灯火器の取付高さにも注意
多くの部品を取り付けて車両重量が増えると、サスペンションが沈み込み、最低地上高が低下することがあります。ローダウン用コイルスプリングなどを取り付けた場合も同様です。
また、ランニングボード、ウインチ、トレーラーヒッチなどが車体の下方へ突出すると、その構造や取付位置によっては、突出した部分が最低地上高の測定対象になります。
リフトアップやローダウンによって車高が変われば、灯火器の取付高さにも影響します。
指定部品であっても、取り付け後の状態で最低地上高や各灯火器の取付位置に関する基準へ適合する必要があります。
長さ・幅・高さにも上限がある
指定部品の取付けによって車両の寸法が変わっても、一定の条件では記載変更や構造等変更検査が不要です。
しかし、車両の寸法を無制限に大きくできるわけではありません。保安基準では、自動車の寸法について原則として次の上限が定められています。
| 項目 | 上限 |
|---|---|
| 長さ | 12m |
| 幅 | 2.5m |
| 高さ | 3.8m |
まとめ|指定部品でも車両全体での確認が必要
指定部品を取り付けたことで寸法や重量が変化しても、一定の条件では車検証の記載変更や構造等変更検査が不要になります。
しかし、これは指定部品を無制限に取り付けてよいという意味ではありません。
取り付けた部品の重量はすべて車両重量に加算され、装着後の車両は次の基準にも適合する必要があります。
- 車両総重量と前後の軸重
- ブレーキの制動能力の維持
- タイヤの負荷能力
- かじ取車輪にかかる荷重
- 車両の安定性
- 長さ・幅・高さ
- 最低地上高
- 灯火器の取付位置
メーカーの許容限度が明確な貨物車は、その限度を超えることができません。
乗用車についても、元の車両総重量の1.1倍を超えると、制動装置に関する書面審査を省略できなくなる場合があります。
複数の指定部品を取り付ける場合は、それぞれの重量と取付位置を確認し、取り付け後の車両全体で保安基準に適合しているかを判断することが重要です。

なるほどな。指定部品かどうかだけ見ても、車検に通るかは判断できへんっちゅうことか。
今回もいろいろ勉強させてもろたわ。

そのとおりです。
指定部品の取扱いは、車検証の記載変更や構造等変更検査が必要かどうかを判断するためのものです。
「指定部品に該当すること」と「取り付け後の車両が保安基準に適合すること」は、別々に確認する必要があります。



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