車検の最低地上高は一律9cmではない|5cmの例外・計算方法・2.8トン超の扱いを検査員が解説

保安基準解説

クレーマー 九条
クレーマー 九条

検子ちゃん、また保安基準について教えてくれんか。

最低地上高の基準やけど、9cm以上で間違いないよな?

あと、エンジンとかを保護するアンダーカバーの部分は5cm以上で、樹脂製のマッドガードとかは何cmでもええんやろ?

検査員 検子
検査員 検子

はい、基本的な考え方は合っています。

ただし、すべての車や部品が一律に「9cm以上あればよい」とは限りません。

特に、ホイールベースやオーバーハングが長い車は注意が必要です。

クレーマー 九条
クレーマー 九条

どういうことや?

9cm以上あっても、車検に通らへんことがあるんか?

検査員 検子
検査員 検子

はい。部品の位置や車両の寸法によっては、10cmや11cm以上の地上高が必要になる場合があります。

さらに、車の用途や車両総重量によっては、この数値基準自体の対象にならない車もあります。

それでは、最低地上高の基準について詳しく解説していきます。


結論

一般的に、車の最低地上高は「9cm以上必要」と説明されています。この認識は、基本的には間違いではありません。

また、路面などと接触した場合の衝撃に十分耐えられる構造の部位や、自動車の構造・保安上重要な装置を保護するアンダーカバーなどが装着された部位については、一定の条件を満たすことで、9cmの基準を5cmに読み替えられる場合があります。

さらに、自由度を有するゴム製部品や、樹脂製のマッドガード、エアダムスカートなどは、最低地上高の測定対象から除かれます。

ここまで理解している方は多いかもしれません。

しかし、最低地上高の基準は「車体の最も低い部分が9cmあればよい」という単純なものではありません。

前輪と後輪の間に位置する部品ではホイールベース、前輪より前方または後輪より後方に位置する部品ではオーバーハングの長さに応じた地上高も必要です。

そのため、車体が長い車では、部品の位置によって10cmや11cm以上の地上高が必要になる場合があります。

この記事では、最低地上高の測定方法や測定対象から除かれる部品、ホイールベース・オーバーハングによって必要な地上高が変わる理由について、検査員の視点から詳しく解説します。


最低地上高を測定するときの条件

最低地上高は、次の条件で測定します。

  • 車両は空車状態とする
  • タイヤの空気圧は規定された値とする
  • 車高調整装置は標準または中立の位置とする
  • 舗装された平らな場所に車を置く
  • 巻尺などを使用して地面から部品までの高さを測定する
  • 測定値は1cm未満を切り捨て、cm単位とする

車高を任意の位置で保持できる車高調整装置については、最低位置と最高位置の中間となる位置で測定します。

クレーマー 九条
クレーマー 九条

エアサスを一番高くした状態で車検を受けたらええわけやないんやな。

検査員 検子
検査員 検子

はい。車高調整装置が付いている車も、定められた状態で測定します。

車検のときだけ車高を上げればよい、というわけではありません。


なぜホイールベースやオーバーハングが影響する?

ホイールベースが長いと凸状の路面で接触しやすくなる

図のとおり、ホイールベースが長い車は、凸状の路面や坂道の頂上を通過する際、車体中央部が路面に接触しやすくなります。

ホイールベースとは、前輪の中心から後輪の中心までの距離です。

車高が同じ車同士で比較した場合、ホイールベースが長いほど前輪と後輪の間隔が広くなるため、車体中央部が路面へ近づきやすくなります。

特に、次のような場所では注意が必要です。

  • 坂道の頂上
  • 立体駐車場のスロープ
  • 踏切
  • 盛り上がった路面
  • 段差を斜めに通過できない場所

そのため、最低地上高の基準では、車体下面が一律9cm以上あればよいのではなく、ホイールベースの長さに応じた地上高も求められています。

オーバーハングが長いと坂道走行時に接触しやすくなる

オーバーハングとは、前輪より前方または後輪より後方へ張り出している車体部分のことです。

オーバーハングが長い車は、平らな道路から坂道へ進入するときや、坂道から平らな道路へ移るときに、バンパーや車体下面が路面へ接触しやすくなります。

例えば、前側のオーバーハングが長い車では、急な坂道へ進入する際にフロントバンパーの下側が接触する可能性があります。

一方、後側のオーバーハングが長い車では、坂道へ進入した際に、リヤバンパーやその周辺が路面へ接触しやすくなります。

このような接触を防ぐため、前輪より前方または後輪より後方に位置する部品についても、オーバーハングの長さに応じた地上高が必要です。

クレーマー 九条
クレーマー 九条

確かに、ホイールベースやオーバーハングが長いと、地面に接触しやすくなるな。

図で見ると分かりやすいわ。

せやけど、実際に何cm以上になると、最低地上高が9cmでは足りなくなるんや?

検査員 検子
検査員 検子

ホイールベースは300cm以上になると、前輪と後輪の間に位置する部品には10cm以上の地上高が必要になります。

また、車軸の中心から測定する部品までの水平距離が73cm以上になると、その部品にも10cm以上の地上高が必要です。

検査員 検子
検査員 検子

ただし、すべての部品に一律で10cmが必要になるわけではありません。部品が取り付けられている位置によって判断します。

それでは、必要な最低地上高の計算方法を確認してみましょう。


必要な最低地上高の計算方法

最低地上高を確認するときは、単純に車体の最も低い部分が9cm以上あるかを確認するだけではありません。

部品が取り付けられている位置に応じて、次の基準も確認します。

  • 前輪と後輪の間にある部品:ホイールベースを使って計算
  • 前輪より前方または後輪より後方にある部品:車軸から測定部位までの距離を使って計算

計算によって9cmを超える数値が求められた場合は、その数値以上の地上高が必要です。

ホイールベース間にある部品の計算方法

前輪と後輪の間にある部品に必要な地上高は、次の計算式で求めます。

H=Wb×0.02+4

ただし、判定値は1cm未満を切り捨てること

それぞれの記号は、次の数値を表しています。

  • H:必要な最低地上高(cm)
  • Wb:ホイールベース(cm)

ホイールベースは、前輪の中心から後輪の中心までの距離です。

ホイールベースが225cmの場合

225×0.02+4=8.5cm

計算結果は8.5cmですが、判定値は1cm未満を切り捨てるため、8cmとなります。

ただし、車体下面全体の最低地上高は原則として9cm以上必要です。

そのため、ホイールベースから求めた判定値が8cmであっても、この部位には9cm以上の地上高が必要です。

ホイールベースが300cmの場合

300×0.02+4=10cm

ホイールベースが300cmになると、前輪と後輪の間に位置する部品には10cm以上の地上高が必要になります。

クレーマー 九条
クレーマー 九条

アルファードとかヴェルファイアって確かホイールベースは300cmやなかったか?

ってことはこれらの車は10cm以上必要ってことか!?

検査員 検子
検査員 検子

30系や現行の40系アルファード・ヴェルファイアは、ホイールベースが300cmあります。

そのため、ローダウンなどによって最低地上高が低くなる改造をした場合、前輪と後輪の間に位置する測定対象部位には、計算上10cm以上の地上高が必要です。

検査員 検子
検査員 検子

ただし、車体下面のすべての部品に10cmが必要という意味ではありません。部品の位置や構造によって判断します。

クレーマー 九条
クレーマー 九条

最低地上高は9cmだけ確認すればええと思ってたけど、アルファードみたいな車は特に注意が必要なんやな。

オーバーハング部分の計算方法

前輪より前方または後輪より後方にある部品は、次の計算式で必要な地上高を求めます。

H=Ob×0.11+2

それぞれの記号は、次の数値を表しています。

  • H:必要な最低地上高(cm)
  • Ob:車軸の中心から測定する部品までの水平距離(cm)

前側の部品を確認するときは前輪の中心、後側の部品を確認するときは後輪の中心から測定します。

ここで使用するObは、車両諸元上のオーバーハング全体の長さとは限りません。車軸の中心から、実際に地上高を測定する部品までの水平距離です。

測定部位までの距離が50cmの場合

50×0.11+2=7.5cm

計算結果は7.5cmですが、車体下面全体には9cmの基準があります。

そのため、この部品に必要な地上高は7.5cmではなく、原則として9cmです。

測定部位までの距離が73cmの場合

73×0.11+2=10.03cm

1cm未満を切り捨てると、必要な地上高は10cmです。

つまり、車軸中心から測定する部品までの距離が73cm以上になると、9cmでは足りず、10cm以上の地上高が必要になります。

測定部位までの距離が100cmの場合

100×0.11+2=13cm

車軸中心から測定部位までの距離が100cmある場合、その部品には13cm以上の地上高が必要です。

計算結果と9cmを比較して判断する

最低地上高は、それぞれの計算結果だけで判断するわけではありません。

基本となる9cmの基準と、部品の位置に応じた計算結果を比較し、数値が大きい方を確認します。

部品の位置確認方法
車体下面全体原則9cm以上
前輪と後輪の間9cmと「Wb×0.02+4」の大きい方
前輪より前方・後輪より後方9cmと「Ob×0.11+2」の大きい方

ただし、衝撃に十分耐えられる構造の部位や、一定の条件を満たすアンダーカバー、測定対象から除かれる樹脂製部品などは扱いが異なります。


5cm以上に読み替えられる部位

最低地上高は原則として9cm以上必要ですが、次のいずれかに該当する部位は、9cmの基準を5cmに読み替えられる場合があります。

  • 路面などと接触したとき、その衝撃に十分耐えられる構造
  • 車両の構造や保安上重要な装置を保護する機能を有するアンダーカバーなどが装着された構造

ただし、アンダーカバーが取り付けられていれば、無条件に5cm以上でよいわけではありません。

重要な装置を保護する機能や、接触時の衝撃に耐えられる構造であることが必要です。

また、その部位が前輪と後輪の間にある場合は、ホイールベースから求めた地上高についても確認します。

そのため、条件を満たすアンダーカバーであっても、取り付け位置に関係なく5cm以上あればよいとは限りません。

クレーマー 九条
クレーマー 九条

アンダーカバーが付いていれば、全部5cmでええわけやないんか?

検査員 検子
検査員 検子

はい。「アンダーカバーという名前の部品が付いているか」ではなく、その部品が重要な装置を保護する機能を持っているか、路面に接触したときの衝撃に耐えられる構造かを確認します。

見た目がカバー状になっているだけで、無条件に5cmが認められるわけではありません。


最低地上高を測定しない部品

最低地上高を測定するときは、次の部品を測定対象から除きます。

  • タイヤと連動して上下するブレーキドラムの下端
  • サスペンションのロアアームなどの下端
  • 自由度を有するゴム製部品
  • 樹脂製のマッドガード
  • 樹脂製のエアダムスカート
  • 樹脂製のエアカットフラップなど

ただし、樹脂製の部品なら、すべて測定対象外になるわけではありません。部品の材質だけでなく、その種類や構造を確認して判断します。

また、最低地上高の測定対象外であっても、取付けが不確実であったり、脱落するおそれがあったりする状態まで認められるわけではありません。


車両総重量2.8トン超の車にも9cm基準は適用される?

クレーマー 九条
クレーマー 九条

これで最低地上高の基準は分かったわ。

車体下面は原則9cm。ただし、条件を満たす部位では、全面の9cm基準を5cmに読み替えられる。それに、ホイールベースやオーバーハングによる基準もあるんやな。

勉強なったわ、ほな。

検査員 検子
検査員 検子

あ、ちょっと待ってください。

九条さんにはまだ最低地上高についてすべてをお話ししていません。

クレーマー 九条
クレーマー 九条

なんや、まだなんかあるんか?

検査員 検子
検査員 検子

実は車両総重量が2.8トンを超える貨物車は、9cmやホイールベースなどによる数値基準の対象に含まれていません。

ただし、「2.8トンを超えればすべて対象外」という意味ではありませんよ。

9cmなどの数値基準が適用される車

車両区分9cmなどの数値基準
車両総重量2.8トン以下の普通・小型自動車(乗車定員10人以下)対象
車両総重量2.8トン超の乗用車(乗車定員10人以下)対象
車両総重量2.8トン超の貨物車対象外
乗車定員11人以上の自動車対象外
軽自動車対象

最低地上高が低くなる改造を行った車のうち、車両総重量2.8トン以下の普通・小型自動車、乗車定員10人以下の乗用車、軽自動車などには、9cmなどの数値基準が適用されます。

乗車定員10人以下の乗用車は、車両総重量が2.8トンを超えていても対象です。

一方、車両総重量2.8トン超の貨物車や、乗車定員11人以上の自動車は、この数値基準の対象に含まれていません。

2.8トンを超えれば最低地上高は何cmでもよい?

クレーマー 九条
クレーマー 九条

ほんなら、車両総重量2.8トン超の貨物車は、最低地上高が5cmでも3cmでもええということか?

それやと、ハイエースやキャラバンをカスタムしている人らは、極限まで車高を下げてまうんちゃうか?

検査員 検子
検査員 検子

いいえ、そういう意味ではありません。

対象外になるのは、9cmやホイールベース、オーバーハングによって求める数値基準です。

最低地上高そのものの基準がなくなるわけではありません。

検査員 検子
検査員 検子

そのため、車両総重量2.8トン超の貨物車であっても、車体や重要な装置が容易に路面へ接触する状態や、安全な運行を確保できないほど低い状態が認められるわけではありません。

最低地上高については、自動車の種別や用途にかかわらず、大前提として「安全な運行を確保できるよう、地面との間に適当な間げきを有すること」が求められています。

【最低地上高の基準】
自動車の最低地上高は、巻尺等その他適切な方法により審査したときに、自動車の接地部以外の部分が、安全な運行を確保できるように地面との間に適当な間げきを有するものでなければならない。

つまり、最低地上高の本来の基準は、単に「9cm以上あること」ではありません。

最低地上高を低くする改造を行った車のうち、数値基準の対象となる車については、9cmやホイールベース、オーバーハングから求めた数値を満たしていれば、この基準に適合するものとして扱われます。

一方、車両総重量2.8トン超の貨物車や、乗車定員11人以上の車などは、この数値基準の対象に含まれていません。

そのため、「9cm未満なら直ちに不適合」「9cm以上なら必ず適合」と判断するのではなく、車両の構造や部品の位置、路面との接触のおそれなどを踏まえ、安全な運行に必要な間隔が確保されているかを判断することになります。

最低地上高の考え方

最低地上高は、次のように整理できます。

  1. 大前提として、安全な運行を確保できるだけの地面との間隔が必要
  2. 指定自動車等と同一と認められる車は、基準に適合するものとして扱う
  3. 最低地上高を低くする改造を行った対象車は、9cmなどの数値で判断する
  4. 数値基準の対象外でも、基本となる安全上の要件は残る

したがって、車両総重量2.8トン超の貨物車は9cmなどの数値基準の対象外ですが、「最低地上高は何cmでもよい」という解釈は誤りです。

最低地上高についてまとめ

最低地上高は「9cm以上あればよい」と説明されることが多いですが、実際には車両の寸法や部品の位置、構造、車両区分によって判断が変わります。

今回解説した内容をまとめると、次のとおりです。

  • 車体下面の最低地上高は原則9cm以上
  • 条件を満たす部位は、全面の9cm基準を5cmに読み替えられる
  • ロアアームや自由度を有するゴム製部品、樹脂製のマッドガードなどは測定から除かれる
  • 前輪と後輪の間にある部品は、ホイールベースによる計算も必要
  • 前輪より前方または後輪より後方にある部品は、車軸から測定部位までの距離による計算も必要
  • ホイールベースが300cm以上になると、軸距間の測定対象部位には10cm以上必要
  • 車軸中心から測定部位までの距離が73cm以上になると、その部位には10cm以上必要
  • 車両総重量2.8トン超の貨物車や、乗車定員11人以上の車は数値基準の対象外
  • 数値基準の対象外でも、安全な運行に必要な地面との間隔は確保しなければならない

最低地上高を確認するときは、車体の最も低い部分を測定するだけでは不十分です。

測定する部品の位置や構造に加え、車検証に記載された用途、乗車定員、車両総重量についても確認する必要があります。

クレーマー 九条
クレーマー 九条

最低地上高は9cm、アンダーカバーは5cmとだけ覚えていたけど、それだけでは判断できへんのやな。

ホイールベースや部品の位置、車両総重量まで確認せなあかんとは思わんかったわ。

検査員 検子
検査員 検子

はい。最低地上高は、一つの数値だけで判断できる基準ではありません。

特に車高を下げる場合は、最も低い部分だけでなく、その部品が取り付けられている位置や、車両区分まで確認することが大切です。

検査員 検子
検査員 検子

また、数値基準の対象外であっても、安全な運行を確保できないほど車高を下げてよいわけではありません。

正しい基準を理解し、路面との接触にも余裕を持った車高にすることが、安全な走行と車検への適合につながります。

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