自動車メーカーから「リコールのお知らせ」が届くと、
「この車は危険なのか」
「すぐに運転をやめた方がよいのか」
「修理代はいくらかかるのか」
と、不安になる方も多いのではないでしょうか。
自動車は数多くの部品で構成されているため、開発段階で試験を重ねていても、市場に出てから初めて分かる不具合があります。
そのため、リコールが発生したことだけで、直ちに「信用できないメーカー」と判断するのは適切ではありません。
本当に重要なのは、不具合が判明した後、メーカーが正しく公表し、速やかに改修を行ったかどうかです。
一方、不具合を把握しながら使用者へ知らせない「リコール隠し」は、重大事故につながる可能性があります。
今回は、自動車のリコール制度について、営業マンの大口とクレーマーの九条が初心者向けにわかりやすく解説します。
安全に妥協しない姿勢をテーマにした曲『NO COMPROMISE』とあわせてご覧ください。

大口、俺はリコールが出たからいうて、そのメーカーが全部あかんとは思ってへん。
車は何万点もの部品でできとるんや。どれだけ試験しても、市場に出てから初めて分かる不具合かてあるやろ。

おっしゃるとおりです。
リコールは、不具合による事故を未然に防ぐための制度です。問題が見つかった後、メーカーが適切に公表し、対象車を改修することには大きな意味があります。

せやけど、不具合があると分かっとるのに、それを隠すんは話が別や。
事故が起きてから「整備不良や」「使い方が悪い」では納得できへん。
そもそも、どこからがリコールになるんや?

では、リコールの条件から、対象車の調べ方、修理費用、車検への影響、リコール隠しまで順番に確認していきましょう。
自動車のリコールとは?
自動車のリコールとは、設計または製造上の問題によって、道路運送車両の保安基準に適合しなくなるおそれがある場合に、自動車メーカーなどが国土交通省へ届け出て、対象車両を点検・修理する制度です。
例えば、次のような不具合が挙げられます。
- ブレーキ部品が破損して制動力が低下する
- ハンドル操作ができなくなる
- 燃料が漏れて火災に至る
- エアバッグが正常に作動しない
- 走行中にエンジンが停止する
- タイヤや重要部品が脱落する
- 灯火装置が保安基準に適合しなくなる
- 排出ガスが基準値を超える
現在は正常に走行できていても、同じ設計や部品を使用しており、将来的に同じ不具合が発生する可能性があれば、対象になることがあります。
つまり、リコールは「故障した車だけを修理する制度」ではありません。
症状や事故が発生する前に対策し、同じ原因による事故を防ぐための制度です。
通常の故障や経年劣化との違い

年数が経って部品が壊れた場合も、メーカーの責任になるんか?

すべての故障がリコールになるわけではありません。
部品の寿命や整備不足、事故、誤った使用方法などが原因の場合は、通常の修理として扱われます。
次のようなものは、一般的にはリコールに該当しません。
- タイヤやブレーキパッドの摩耗
- バッテリーの寿命
- エンジンオイル不足による故障
- 定期交換部品を交換しなかったことによる故障
- 事故によって損傷した部品
- 不適切な改造による不具合
- 長期間使用したことによる一般的な劣化
ただし、経年劣化に見える不具合でも、調査の結果、部品の強度不足や製造工程上の問題が原因と判明することがあります。
その場合は、発売から長い年数が経過した車でもリコールになる可能性があります。
リコール・改善対策・サービスキャンペーンの違い
自動車メーカーが実施する改善措置には、リコール以外にも「改善対策」と「サービスキャンペーン」があります。

改善対策は、保安基準に直接規定されている部分ではないものの、不具合が起きた場合に安全上または環境保全上、放置できない問題がある場合に行われます。
サービスキャンペーンは、リコールや改善対策には該当しないものの、商品性や品質を改善するために行われます。
例えば、ナビゲーションの表示や内装部品、快適装備など、安全性に直接関係しない不具合が対象になることがあります。
このほか、メーカー独自の対応として、保証期間の延長や無料修理期間の設定が行われる場合もあります。
リコールが発表されるまでの流れ
リコールは、一般的に次のような流れで実施されます。
- 使用者や販売店からメーカーへ不具合情報が寄せられる
- メーカーが車両や部品を調査する
- 不具合の原因や発生条件を特定する
- 対象となる型式・製造期間・車台番号を確認する
- メーカーが国土交通省へ届け出る
- 国土交通省とメーカーが内容を公表する
- 対象となる使用者へ通知する
- 販売店などで点検・部品交換を行う
- メーカーが改修状況を管理・報告する
原因の特定や対象範囲の調査、交換部品の準備などに時間がかかる場合もあります。
そのため、先にリコールだけを発表し、修理の準備が整ってから改めて案内されることもあります。
リコールを出したメーカーは信用できない?

リコールが多いメーカーを見たら、「この会社、大丈夫なんか」と思う人もおるやろな。

確かに、リコールの内容や頻度は判断材料の一つになります。
ただし、リコールを届け出たこと自体は、不具合を公表して事故を防ぐための行動でもあります。

不具合が出たことだけやなくて、分かった後にどう動いたかを見るべきいうことやな。

そのとおりです。
原因を速やかに調査したか、対象範囲を適切に設定したか、使用者へ分かりやすく通知したか、必要な改修を確実に行ったかが重要です。
自動車の不具合を完全にゼロにすることは簡単ではありません。
メーカーを評価するときは、リコール件数だけでなく、不具合が判明した後の対応も確認する必要があります。
リコール通知が届いたらどうすればよい?

リコール通知が届いたら、まず次の内容を確認しましょう。
- 対象となっている部品
- 発生する可能性がある不具合
- 不具合が発生した場合の危険性
- 使用を控える必要があるか
- 改善措置の内容
- 修理を受けられる販売店
- 作業開始時期と作業時間
そのうえで、メーカー系列の販売店などへ連絡し、作業日時を予約します。
予約せずに持ち込むと、対策部品の在庫がなく、当日中に作業できない可能性があります。
問い合わせるときは、車検証とリコール通知を用意しておくと確認がスムーズです。
リコール修理の費用は無料?
リコールで指定された点検、部品交換、作業工賃は、原則としてメーカーが負担するため無料です。
新車保証が終了している車や、中古車として購入した車でも、リコール対象車であれば基本的に無料で改修を受けられます。
ただし、次の費用まで必ず無料になるとは限りません。
- 販売店までの燃料代や高速道路料金
- 代車費用
- レッカー費用
- リコールと関係のない追加整備
- 社外部品や改造部品の脱着費用
- 純正状態へ戻すための作業費用
代車の有無や費用については、予約時に販売店へ確認しましょう。
改造によって対象部品へアクセスできない場合や、対策部品を正しく取り付けられない場合は、先に純正状態へ戻すよう求められる可能性もあります。
修理が終わるまで運転してもよい?

もしかしてリコールが発表されたら、修理が終わるまで運転したらあかんのか?

不具合の内容によって判断が異なります。
通知に「使用を控えてください」「ただちに点検を受けてください」などの注意がある場合は、その指示を優先してください。
リコール対象車だからといって、すべての車が直ちに走行不能になるわけではありません。
ただし、ブレーキ、ハンドル、燃料漏れ、発火、部品の脱落など、重大事故につながる内容には注意が必要です。
異臭、煙、燃料漏れ、警告灯、ブレーキやハンドルの異常などがすでに発生している場合は、無理に自走させず、販売店やロードサービスへ相談してください。
リコールを受けないと車検に通らない?
原則として、未改修のリコールがあるという情報だけで、すべての車が自動的に車検不合格になるわけではありません。
ただし、リコール原因となっている不具合が実際に発生し、検査時点で保安基準に適合していなければ、その不適合状態を理由に車検で不合格となります。
例えば、灯火装置が正常に点灯しない、制動力が不足している、排出ガスが基準値を超えているといった場合です。
この場合は「リコールが未改修だから」というより、検査時の車両状態が保安基準に適合していないことが不合格の理由です。
また、危険性が特に高い一部のタカタ製エアバッグ未改修車については、改修を受けるまで車検を通さない特例措置が実施されています。
正確には、次のように整理できます。
リコール未改修車が一律に車検不合格になるわけではありません。ただし、現車が保安基準に適合していない場合や、車検を通さない特例措置の対象車両は別です。
車検に合格した車でもリコール修理は必要

車検に合格したばっかりの車でも、リコール修理は受けなあかんのか?

はい。車検に合格していても、リコール対象であれば改修を受ける必要があります。
車検は、検査時点で保安基準に適合しているかを確認するものです。
将来的に発生する可能性がある設計・製造上の不具合まで、すべて保証する制度ではありません。
「車検に通ったから、今後も故障しない」という意味ではないため、リコール通知が届いた場合は早めに対応しましょう。
自分の車がリコール対象か確認する方法
最も確実なのは、車検証に記載されている車台番号を使い、メーカーの公式サイトで確認する方法です。
メーカーの検索ページでは、次の情報を確認できる場合があります。
- 対象となっているリコール
- 改善対策
- サービスキャンペーン
- 改修済みか未改修か
- 改善措置の内容
国土交通省の検索ページでは、車名、型式、届出日などからリコールや改善対策を検索できます。
ただし、公表されている車台番号の範囲に入っていても、製造工場やグレードなどの違いにより、実際には対象外となる場合があります。
最終的な対象判定は、メーカーまたは販売店へ確認してください。
通知が届かないこともある
対象車であっても、次のような理由で通知が届かないことがあります。
- 引っ越し後に車検証の住所を変更していない
- 中古車購入後の名義変更が済んでいない
- メーカーが現在の使用者を把握できていない
- 通知がまだ発送されていない
- 車台番号の範囲には入っているが実際には対象外
引っ越しをして住民票を移しても、車検証の住所は自動的に変更されません。
国土交通省は、住所や所有者が変わった場合、原則として15日以内に変更登録または移転登録を行うよう案内しています。
軽自動車についても、住所や名義が変わった場合は、軽自動車検査協会で手続きが必要です。
中古車を購入するときも確認しよう
中古車では、以前の所有者がリコール改修を受けていない可能性があります。
購入前または納車後に、次の内容を確認しましょう。
- 未改修リコールの有無
- 改善対策やサービスキャンペーンの有無
- 過去の改修履歴
- 車検証と車体の車台番号
- 車検証の名義と住所
以前は、リコール改修済み車に統一的なリコールステッカーが貼られていましたが、この運用は2020年11月から廃止されています。
現在はステッカーの有無だけで判断せず、メーカーの検索ページや販売店で確認する方法が確実です。
リコール隠しとは?
リコールが必要な不具合をメーカーが把握しながら、国土交通省へ届け出ず、使用者への周知や必要な改善措置を行わないことは、一般に「リコール隠し」と呼ばれます。
例えば、次のような行為が問題になります。
- 不具合情報を行政へ報告しない
- 社内で不具合情報を隠す
- 本来リコールすべき車を一部だけ秘密裏に修理する
- 原因を使用者や整備事業者の責任として処理する
- 事故との関連を認識しながら調査しない
- 虚偽の報告をする
国土交通省によると、虚偽報告、リコールの届出義務違反、リコール命令に従わない場合には、行為者に対する懲役や罰金のほか、法人に対する罰金も規定されています。
『空飛ぶタイヤ』が描いたリコール隠し

リコール隠しいうたら、『空飛ぶタイヤ』を思い出すな。
あの話では、タイヤが脱落した原因を運送会社の整備不良にされとったやろ。

池井戸潤さん原作の『空飛ぶタイヤ』は、三菱自動車・三菱ふそうのリコール隠し事件を背景にしたフィクションとして知られています。
作品では、大型トラックのタイヤ脱落事故をきっかけに、運送会社が整備不良を疑われます。
しかし、調査を進めるうちに、車両の構造的な問題やメーカー内部の隠蔽が明らかになっていきます。

機械を作っとる以上、不具合を完全にゼロにするんが難しいことくらい分かっとる。
せやからこそ、問題が分かった後の対応が大事なんちゃうんか。
正直に公表して、対象車を調べて、必要な修理をする。それがリコール制度やろ。
リコールを届け出たメーカーより、不具合を知りながら黙っとる方が、よっぽど信用できへんで。

まさにそのとおりです。
リコール制度は、メーカーを責めることだけが目的ではありません。
不具合を公表し、必要な改修を行うことで、同じ原因による事故を繰り返さないことが本来の目的です。
同じ不具合が多発していると感じた場合
自分の車に重大な不具合が発生したものの、リコールや改善対策が発表されていない場合は、メーカーや販売店へ相談しましょう。
あわせて、国土交通省の「自動車不具合情報ホットライン」へ情報提供することもできます。
情報提供するときは、次の内容を整理しておくと役立ちます。
- 車名・型式・車台番号
- 初度登録年月
- 走行距離
- 不具合が発生した日時と状況
- 警告灯・異音・異臭などの症状
- 販売店や整備工場の診断結果
- 事故や火災の有無
- 改造の有無
一人から寄せられた情報だけで、すぐにリコールが決まるわけではありません。
しかし、同じ症状の情報が複数集まれば、メーカーや国が調査を始める重要なきっかけになります。
まとめ
自動車のリコールは、設計・製造上の問題による事故や保安基準不適合を未然に防ぐための制度です。
重要なポイントを整理すると、次のようになります。
- 症状が出ていない車でもリコール対象になる
- 指定された点検や修理は原則無料
- 中古車や保証切れの車も対象になり得る
- 改善対策やサービスキャンペーンとは位置づけが異なる
- リコール未改修だけで一律に車検不合格になるわけではない
- 現車が保安基準不適合なら車検に通らない
- 通知がなくても車台番号から自主確認できる
- 引っ越しや売買後は車検証の住所・名義変更が必要
- 同じ不具合が続く場合は国土交通省へ情報提供できる

リコールが出たことだけ見て、メーカーを責めたらええいう話やないんやな。
不具合が分かった後、隠さず公表して、どれだけ早く改修したかが大事なんや。

はい。
リコールは、同じ原因による事故を繰り返さないための制度です。

不具合が起きることはある。
けど、人の命に関わる情報を隠すことに、言い訳は通用せえへん。
安全だけは、絶対に妥協したらあかん。
クレーマー 九条

それが『NO COMPROMISE』ということですね。
リコール通知が届いた場合や、自分の車が対象だと分かった場合は、そのまま放置せず、早めにメーカーまたは販売店へ相談しましょう



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