「12か月点検って、必ず整備工場に出さないといけないの?」
「車検とは何が違うの?」
自家用乗用車や軽乗用車には、1年ごとに法定12か月点検を行うことが義務付けられています。
しかし、12か月点検を受けなかったからといって、自家用乗用車の使用者に直接的な罰則が科されるわけではありません。
そのため、「罰則がないなら、点検を受けなくてもよいのでは?」と考える方もいるでしょう。
この記事では、12か月点検の必要性や点検項目、自分で点検するときの注意点について、整備士の整子が解説します。

整子さん、整備工場から「法定12か月点検のお知らせ」というハガキが届いたの。
12か月点検が法律で義務付けられていることは知っているけれど、自家用乗用車の場合、受けなくても直接的な罰則はないのよね?
それでも、わざわざお金を払って受ける必要があるのかしら?

罰則がないからといって、必要がないわけではないわ。
12か月点検には、車の故障や部品の劣化を早めに発見する役割があるの。
安全に乗り続けるためにも、きちんと点検することを勧めるわ。
法定12か月点検とは?

法定12か月点検とは、車の故障や部品の劣化を早期に発見するため、使用者に実施が義務付けられている定期点検です。
自家用乗用車や軽乗用車は、1年ごとに原則29項目を点検します。整備工場への依頼は必須ではなく、必要な知識や工具があれば使用者本人でも実施できます。
12か月点検と車検の違い
車検は、検査時点で車が保安基準に適合しているかを確認する制度です。
一方、12か月点検は、部品の摩耗や劣化を早期に発見し、故障を未然に防ぐことを目的としています。車検に合格していても、その後の安全性まで保証されるわけではありません。
罰則がなくても12か月点検は必要?
自家用乗用車や軽乗用車では、12か月点検を実施しなくても直接的な罰則はありません。
しかし、点検の実施義務がなくなるわけではありません。不具合が大きくなる前に発見することで、事故や高額な修理を防げる可能性があるため、定期的な点検が重要です。
12か月点検にはいくらかかる?
12か月点検の料金は、車種や依頼する店舗によって異なりますが、おおむね1万円から2万円程度が目安です。
ディーラーは車種に詳しく、メーカーの基準に沿った点検を受けられる一方、料金は比較的高くなる傾向があります。整備工場やカー用品店では、比較的手頃な料金で受けられる場合があります。
ただし、基本料金に含まれるのは点検料だけであることが多く、部品代や交換工賃は別途必要です。

点検だけで1万円以上かかって、部品交換があればさらに追加なのね。
やっぱり、自分で点検した方が安く済みそうだわ。
12か月点検は自分でもできる?
12か月点検は、必ず整備工場へ依頼しなければならないものではありません。自分の車であれば、整備士資格を持っていない使用者でも実施できます。
ただし、タイヤやエンジンルームを目視するだけでは、12か月点検を実施したことにはなりません。自家用乗用車や軽乗用車では、原則として29項目を適切な方法で点検する必要があります。
点検項目には、車を持ち上げたり、タイヤやブレーキドラムを取り外したりしなければ確認できないものもあります。そのため、工具だけでなく、安全に作業できる場所や知識も必要です。
点検後は、結果や実施した整備の内容を点検整備記録簿へ記入し、車に備え付けて2年間保存します。異常を発見した場合は、必要な整備も行わなければなりません。

自分で点検することはできるけれど、正しく良否を判断できることが前提よ。
無理にすべて自分で行わず、判断できない部分だけ整備工場に依頼する方法もあるわ。
それでは、12か月点検では何を確認するのか、29項目を順番に見ていきましょう。
12か月点検を始める前の確認事項
☆印は、前回その項目を定期点検してからの走行距離が年間5,000km未満の場合に省略できる項目です。ただし、2回連続して省略することはできません。
◎印は、白金プラグまたはイリジウムプラグを使用している場合に省略できる項目です。
点検整備記録簿の記号
点検や整備を行ったら、結果に応じてチェック欄へ次の記号を記入します。
| 記号 | 内容 |
|---|---|
| レ | 点検の結果、良好 |
| × | 交換 |
| A | 調整 |
| C | 清掃 |
| P | 条件を満たして点検を省略 |
| △ | 修理 |
| T | 締め付け |
| L | 給油・給水 |
| / | 該当なし |
| ○ | 特定整備を実施 |
点検のためにブレーキドラムを取り外すなど、特定整備を伴った場合は、該当する作業記号を○で囲みます。
例えば、ブレーキドラムを取り外して点検し、内部を清掃した場合は、「C」を○で囲んで記入します。
難易度の基準
| 難易度 | 目安 |
|---|---|
| Dランク | 工具を使わず、目視や操作で確認できる |
| Cランク | 基本的な工具や簡単な測定が必要 |
| Bランク | 整備経験や車種ごとの基準値が必要 |
| Aランク | ジャッキアップや部品の取り外しが必要 |
| Sランク | 専用機器や高度な判断が必要。整備工場への依頼を推奨 |
点検難易度はD・C・B・A・Sの5段階で、DからSへ進むほど難易度が高くなります。難易度は一般ユーザーが自分で点検する場合の目安です。
エンジンルーム点検
■パワーステアリング
ベルトの緩み、損傷 □(Bランク)
ベルト駆動式の油圧パワーステアリング車では、エンジンを停止し、ベルトを約10kgの力で押して、たわみ量や亀裂、摩耗、損傷を確認します。
たわみ量はメーカーの基準値と比較します。電動パワーステアリング(EPS)など、ベルトを使用していない車は対象外です。
■点火装置
☆◎スパークプラグ □(Cランク)
イグニッションコイルやプラグコードを取り外し、プラグレンチを使ってスパークプラグを外します。電極の汚れや摩耗、プラグギャップを確認します。
点火時期 □(Sランク)
ディストリビューターを備えた車では、タイミングライトを使って点火時期を確認します。専用機器を使用するため難易度は高めです。
ディストリビューターのキャップの状態 □(Cランク)
キャップを取り外し、亀裂や汚れ、内部端子の焼損や腐食を確認します。ディストリビューターを備えていない車は対象外です。

最近の車は、コンピューターで点火時期を制御する電子制御式が主流なの。
ディストリビューターが付いていない車では、「点火時期」と「ディストリビューターキャップの状態」は対象外になるわ。
■バッテリー
ターミナル部の緩み、腐食による接続不良 □(Dランク)
バッテリーのプラス・マイナス端子を手で軽く動かし、緩みがないか確認します。あわせて、端子周辺に白色や青緑色の腐食物が付着していないかを目視します。
■エンジン
排気ガスの色 □(Dランク)
エンジンを十分に暖機し、排気ガスに異常な白煙、黒煙、青白い煙がないか目視します。換気のよい屋外で確認してください。
CO、HCの濃度 □(Sランク)
ガソリン車やLPG車では、CO・HCテスターを使用して排気ガスの濃度を測定します。専用機器が必要なため、整備工場への依頼を推奨します。
☆エアクリーナー、エレメントの汚れ、詰まり、損傷 □(Cランク)
エアクリーナーエレメントを取り外し、汚れや詰まり、損傷がないか確認します。取り外し方法は車種によって異なります。清掃した場合はチェック欄に「C」と記入しましょう。
■冷却装置
ファンベルトの緩み、損傷 □(Bランク)
エンジンを停止し、ベルトのたわみ量がメーカーの基準値内にあるか確認します。あわせて、亀裂や摩耗、損傷がないかを目視します。
冷却水の漏れ □(Cランク)
ラジエーター、ウォーターポンプ、ホースや接続部から、冷却水の漏れや漏れた跡がないか確認します。エンジンが熱いときは、ラジエーターキャップを開けないでください。
室内点検
■ブレーキペダル
遊び □(Bランク)
エンジンを停止してペダルを数回踏んだ後、手で押して抵抗を感じるまでの遊びを測定し、メーカーの基準値と比較します。
踏み込んだときの床板とのすき間 □(Cランク)
エンジンを始動してブレーキペダルを強く踏み、床板とのすき間や踏みごたえに異常がないか確認します。
ブレーキの効き具合 □(Cランク)
安全な場所で低速走行し、踏力に応じてブレーキが効き、左右に流れずまっすぐ停止するか確認します。
■パーキングブレーキ、レバー(ペダル)
引きしろ(踏みしろ) □(Cランク)
駐車ブレーキを操作し、レバーのノッチ数やペダルの踏みしろがメーカーの基準値内にあるか確認します。電動式は車両の取扱説明書に従って点検します。
パーキングブレーキの効き具合 □(Bランク)
駐車ブレーキを作動させ、勾配のある場所で停止状態を保てるか確認します。車両が動き出さないよう、安全を確保して点検しましょう。

ブレーキは安全に直結する重要な装置よ。
自分で確認できる項目もあるけれど、良否の判断に迷ったり、踏みごたえや効き具合に異常を感じたりした場合は、無理をせず整備士に点検してもらいましょう。
■クラッチペダル
※クラッチペダルのないAT車やCVT車は対象外です。
遊び □(Cランク)
クラッチペダルを手で押し、抵抗を感じるまでの遊びを測定して、メーカーの基準値と比較します。
切れたときの床板とのすき間 □(Bランク)
エンジンを始動し、駐車ブレーキを確実に作動させたうえで、ブレーキペダルを踏んだまま1速に入れます。クラッチペダルを徐々に戻し、クラッチがつながる直前の位置と床板とのすき間を確認します。
足廻り点検
※ブレーキドラムを取り外して行う点検は、特定整備に該当します。
■ブレーキディスク、ドラム
☆ディスクとパッドとのすき間 □(Aランク)
車輪を浮かせて手で回し、ブレーキの引きずりがないか確認します。
☆ブレーキパッドの摩耗 □(Aランク)
ホイールを取り外し、キャリパーの点検孔からパッドの厚みを確認します。残量が使用限度に近い場合は交換が必要です。
☆ドラムとライニングとのすき間 □(Aランク)
車輪を浮かせて手で回し、ブレーキの引きずりやすき間に異常がないか確認します。
☆ブレーキ・シューの摺動部分、ライニングの摩耗 □(Aランク)
ブレーキドラムを取り外し、シューの動きやライニングの摩耗、損傷、剥がれがないか確認します。
ただし、ブレーキドラムは固着している場合があり、取り外すのに専門知識が必要な場合があります。
■ブレーキのマスターシリンダー、ホイールシリンダー、ディスクキャリパー
マスターシリンダーの液漏れ □(Cランク)
マスターシリンダー本体や配管との接続部周辺に、ブレーキ液の漏れやにじみがないか確認します。
ホイールシリンダーの液漏れ □(Aランク)
ブレーキドラムを取り外し、ホイールシリンダーやブーツ周辺から液漏れがないか確認します。
ディスクキャリパーの液漏れ □(Aランク)
ホイールを取り外し、キャリパー本体やピストン、ホース接続部周辺から液漏れがないか確認します。
■ホイール
☆タイヤの空気圧(スペアタイヤを含む) □(Cランク)
タイヤが冷えている状態で空気圧を測定し、運転席ドア付近などに表示された指定値と比較します。スペアタイヤも忘れずに確認しましょう。
☆タイヤの亀裂・損傷 □(Dランク)
タイヤの接地面や側面に亀裂、損傷、異物の刺さり込みがないか、全周を目視します。
☆タイヤの溝の深さ・異常な摩耗 □(Cランク)
スリップサインやデプスゲージを使って溝の深さを確認します。あわせて、片減りや偏摩耗がないか目視します。
☆ホイールボルト・ナットの緩み □(Cランク)
トルクレンチを使用し、メーカー指定の締付トルクで緩みがないか確認します。確認時にナットやボルトが回転し、締付けを行った場合は、チェック欄に「T」と記入します。

タイヤの空気圧は、パンクしていなくても少しずつ低下するの。
12か月点検のときだけでなく、月に1回を目安に確認しましょう。
高速道路を走る前や長距離運転の前にも点検すると安心よ。
下回り点検
■エンジンオイル
漏れ □(Aランク)
エンジン本体やオイルパン、ドレンプラグなどに、オイル漏れやにじみがないか確認します。
■トランスミッション
☆オイルの漏れ □(Aランク)
トランスミッションやトランスファー本体、オイルシールなどからオイルが漏れていないか確認します。
☆オイルの量 □(Aランク)
レベルゲージまたはフィラープラグから、オイル量が適正か確認します。点検方法は車種によって異なります。
■プロペラシャフト・ドライブシャフト
☆連結部の緩み □(Aランク)
シャフトの連結部や取付ボルト、ナットに緩みがないか確認します。
■ブレーキホース・パイプ
漏れ・損傷・取付状態 □(Aランク)
ホースやパイプに液漏れ、亀裂、膨らみ、損傷がないか確認します。あわせて、接続部の緩みや周辺部品との接触がないか点検します。
■エキゾーストパイプ・マフラー
☆取付けの緩み・損傷・腐食 □(Aランク)
排気管やマフラーを揺すり、取付けの緩みや損傷、腐食、排気漏れがないか確認します。
☆遮熱板の取付けの緩み・損傷・腐食 □(Aランク)
遮熱板に緩みや損傷、腐食がないか確認します。排気装置が十分に冷えてから点検しましょう。
■車載式故障診断装置(OBD)
診断の結果 □(Dランク)
イグニッションをONにしたときに対象となる警告灯が点灯し、エンジン始動後に消灯するか確認します。エンジン始動後も点灯または点滅が続く場合は、異常が記録されている可能性があります。
スキャンツールを使用して故障コードを読み取る方法もありますが、診断には専門知識が必要なため、整備工場への依頼を推奨します。
※その他、CNG車や水素自動車などの高圧ガス燃料車では、「導管・継手部のガス漏れおよび損傷」と「ガス容器・ガス容器附属品の損傷」も点検します。一般的なガソリン車やディーゼル車では対象外です。

えー、こんなにたくさん確認する項目があるの?
聞いたことのない部品も出てくるし、専用工具が必要な項目もあるなんて。
全部自分で点検するのは難しそうね。

そうね。車の知識や工具、作業環境がそろっていれば自分でも点検できるけれど、車に詳しくない人がすべての項目を正しく判断するのは、少しハードルが高いわ。
特にブレーキや下回りなど、自信のない項目は無理をせず整備士に任せることを勧めるわ。
自分で点検するときの注意点
安全な作業場所を確保する
平坦で硬い場所に車を止め、駐車ブレーキと輪止めを使用します。
車両を持ち上げる場合は、リジッドラックなどで確実に支えてください。車載ジャッキだけで支えた車の下に入るのは危険です。
点検方法と基準値を確認する
ベルトのたわみ量やペダルの遊び、ホイールナットの締付トルクなどは、車種によって基準値が異なります。
他車種の数値を流用せず、メンテナンスノートや整備要領書などで確認しましょう。
点検していない項目を「良好」にしない
目視しただけでは確認できない項目や、部品を取り外していない項目に「レ」を記入してはいけません。
点検を省略する場合も、☆印があり、走行距離などの条件を満たしていることを確認したうえで「P」と記入します。
点検結果を記録する
点検後は、点検年月日、点検結果、実施した整備の内容、点検実施者の氏名などを点検整備記録簿へ記入します。
自家用乗用車や軽乗用車の点検整備記録簿は、車に備え付けて2年間保存します。
まとめ
法定12か月点検は、自家用乗用車や軽乗用車の使用者に実施が義務付けられている定期点検です。未実施による直接的な罰則はありませんが、故障や部品の劣化を早期に発見するために重要です。
自分の車であれば、整備士資格がなくても点検できます。しかし、すべての項目を正しく確認するには、専門知識や工具、安全な作業環境が必要です。
簡単な項目は自分で確認し、ブレーキや下回り、専用機器が必要な項目は整備工場へ依頼するなど、自分の技量に応じて判断しましょう。

費用だけを考えて、全部自分で行おうとするのは危ないのね。
12か月点検を全部自分で行えば節約できると思ったけれど、ブレーキや下回りまで点検するのは私には難しそうだわ。
無理に自分で行わず、整備工場にお願いすることにするわ。

それが安心ね。でも、車の点検をすべて整備工場に任せきりにする必要はないのよ。
タイヤの空気圧やエンジンオイル、冷却水、ランプ類など、日常点検には自分で確認できる項目がたくさんあるわ。

私にもできる点検があるのね。
それなら、まずは日常点検から始めてみるわ。

その心がけが大切よ。
日常点検は12か月点検の代わりにはならないけれど、車の小さな変化に早く気づくきっかけになるの。
難しい点検は整備士に任せながら、自分で確認できる部分は普段から見るようにしましょう。



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